【書評・要約】『失敗の科学』〜失敗を次に活かす〜
本記事は『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』の書評・要約になります。
著者について
本書の著者はマシュー・サイド氏。
ジャーナリストですが、卓球の元オリンピック選手という異色の経歴を持っています。
『多様性の科学』『きみはスゴイぜ! 一生使える「自信」をつくる本』などの著書もあります。
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本書の概要
本書はタイトルの通り失敗に着目しています。
- 大きなミスはなぜ起こるのか
- 失敗とどのように向き合うか
- 失敗を隠す心理
- 失敗から学習する組織の作り方
などの内容がまとめられています。
個人として気をつけることだけでなく、組織として失敗を防ぎ失敗を次に活かすための方法が記されています。
問題は当事者の熱意やモチベーションにはない。
改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステムの方なのだ。
本書ではこのような考え方のもと、失敗に関する人の心理を解き明かしながら実際的な解決策を提示しています。
オススメしたい人
組織で働くビジネスマンには多くの学びがあると思います。
ビジネスマンに限らず、組織に属している人、運営している人にも強くオススメしたいです。
要点まとめ
ここからは、私が特に印象に残った点をいくつか紹介したいと思います。
気をつけるべき人間の性質
失敗から学習する組織を作る上で、気をつけるべき人間の性質を4つ紹介します。
集中しすぎ
一つ目は集中しすぎるとミスにつながる、ということです。
集中はいいことのように思われますが、集中し過ぎてしまうと周りが見えなくなったり、時間の間隔が麻痺して時間が早く過ぎ去ってしまったりします。
集中しすぎがミスを誘発しうる、ということは留意しておく必要があります。
認知的不協和
二つ目は「認知的不協和」です。
自分の思い込みと事実が一致しない時に生じる不快感やストレス状態のことを指します。
自分の思い込みを修正できれば問題ないのですが、できないときは事実を曲解してしまうことがあります。
自分が作り上げた嘘を信じ込んでしまうことになるのです。
自己を正当化せず、完璧主義から抜け出す必要があります。
単純化
三つ目は「単純化」です。
分かりやすいストーリーや幾つかの目立った結果には注意しなければなりません。
後付けでストーリーが作られてしまうこともあります。
魅力的なストーリーを見たら因果関係や統計データを良く確認した方が良いです。
犯人探しバイアス
四つ目は「犯人探しバイアス」です。
これは単純化を好む性質の延長線上にあります。
ミスは一人の犯人の行動に起因すると考えがちです。
さまざまな角度から物事を検証すること、一人を執拗に避難しないこと。
これらがミスを活かすために重要な姿勢です。
人の心理を考慮した組織づくり
以上のような人間の心理を理解した上で、失敗を次に活かす組織づくりのためにはどのようなことに留意しなければいけないのでしょうか。
まずはミスを非難することは避けましょう。
懲罰は必ずしも学習に有効ではありません。
時として隠蔽につながります。
きついヒエラルキーも良くありません。
部下が上司に報告しずらい空気を作ってしまいます。
すなわち、集団でミスを容認できることが肝要です。
失敗が起こる前提でシステムを構築することで、失敗を無駄にしないことができます。
また、日々小さな改善を積み重ねることも意識すべきです。
何か大きなプロジェクトを行う際には、事前にあらゆるミスを想定することも効果的です
(本書では事前検死と呼ばれています)
まとめ
人間の心理に配慮し、ミスに寛容で多様な視点でミスを分析できるシステムを作るにはどうすれば良いかをまとめた一冊です。
具体例、科学的知見どちらも豊富で、著者がジャーナリストというだけあり文章も読みやすいです。
著者の他の著作同様、強くお勧めできる一冊です。
ぜひご一読あれ