理系博士の小噺

サイエンス系を中心に興味を持った本の要約・レビューをしています。たまに雑記も。

【レビュー・要約】『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』

ここでは『2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ』のレビュー・要約をします。

本書は未来を予測する際の考え方、未来を変えるテクノロジー、今後各分野でどのような変化が起こるのか、を示した一冊になっています。情報量がとんでもなく多いです。未来予測本はたくさんありますが、情報量で言えば本書はトップクラスでしょう。裏を返せば、日頃から情報収集を怠らない人にとっては情報の寄せ集めと感じる部分もあるかもしれません。
本書は幅広い分野での未来予測を知りたい方に特にオススメです。本書を読んだのちに、より専門的な本を読むと各分野の専門書を読むと、理解が深まると思います。

ここからは未来予測する際の考え方、技術が広がる6つのステージ、注目のテクノロジー、加速を加速させる推進力についてまとめたいとおもます。

目次

なぜ未来を予測するのは難しいのか?

最大の理由は「収穫加速の法則」です。
「収穫加速の法則」は『シンギュラリティは近い』の著者、レイ・カーツワイルが提唱しました。これは、テクノロジーは線形的に発展するのではなく、指数関数的(エクスポネンシャル)な速度で拡大する、ということを意味した法則です。未来を予測するためには、指数関数的な成長を考えていかなければならないのです。

この法則に従えば、我々はこれからの100年で、2万年分の技術変化を経験することになります

それでは、「なぜ今なのか?」

その答えを一言で言えば、「コンバージェンス(融合)」です。コンバージェンスは本書の超重要キーワードです。
量子コンピューター、人工知能ナノテクノロジー、3Dプリンティング、ブロックチェーンなど、近年様々なイノベーションが起こっています。現在注目すべきなのは、これまでバラバラに存在していたエクスポネンシャル・テクノロジーが融合しつつあるという事実です。

例えば、医薬品開発が加速しているのは、バイオテクノロジーだけがエクスポネンシャルなスピードで進化しているだけではなく、AI、量子コンピューターなどの幾つものエクスポネンシャル・テクノロジーが融合しつつあるためです。

エクスポネンシャル・テクノロジーの成長の6つのステージ

エクスポネンシャル・テクノロジーのには6つのステージ「6つのD」があります。以下の6つです。

「デジタル化(Degitalization)」:テクノロジーがデジタル化される
「潜航(Deception)」:初期のゆっくりとした成長段階(指数関数的成長の初期は線形的成長とほとんど変わらないため)。世の中の過度な期待に応えられない状態
「破壊(Disruption」:指数関数的成長によって、世界に影響を与え始める
「非収益化(Demonetization)」:かつて製品やサービスにかかっていたコストが消えてしまう
「非物質化(Dematerialization)」:製品そのものが消える
「大衆化(Democratization)」:一般に広がる

ハイプサイクルを別の表現にしたもの、と考えることもできるかもしれません。

 

注目の9つのテクノロジー

現在、エクスポテンシャルな成長をしているテクノロジーは以下の9つが挙げられます。

量子コンピューティング:物理的制約により終わりを迎えるとされるムーアの法則から、次なるパラダイムシフトを引き起こします。特に、化学と物理は量子プロセスであるため、ウェットラボから脱却して「新たな材料、化学物質、医薬品発見の黄金時代」の到来が期待されます。

人工知能:すでにFacebookはユーザーの自殺リスクを判断するために、国防総省は兵士のうつやPTSDの初期兆候を察知する為に使用しています。日本でも、AIが書いた小説が星新一賞の最終選考に残った。「見る」「聞く」「読む」「書く」「知識の統合」の書く能力が急速に高まっています。

ネットワーク(5G・6G・センサー):2010年には18億人、2017年には38億人、さらに驚くことに、これから5年で、全人類が接続の恩恵を享受するようになると予測されます。2030年にはネットに接続されたデバイスは5000億個(それぞれにセンサーが数十個)に達すると見込まれています。健康、農業、製造業、ネットワークが関わらない分野を探す方が困難であるため、影響は言わずもがな、です。

ロボティクス:高齢者介護、ホスピスケア、乳幼児ケア、ペットケア、パーソナルアシスタント、アバター、自動運転車、空飛ぶ車など、来ると言われていた分野で実際にロボットが登場し始めています。経済的な面での革命も起きており、デンマークのロボットメーカー、ユニバーサルロボット製の多関節のコボット「UR3」の市販価格は2マン3000ドルです。工場労働者の世界的な平均賃金並みです。人間をロボットに置き換える企業が大量に出ているのも納得です。

仮想現実(VR)VRの脅威的な点は、プレゼンス(実在感)という新しい現象です。VRを正しく行うと、脳科学的な理由によって、脳はVRを信じてしまうのです。五感の制約が解き放たれます。

3Dプリンティング:今日の3Dプリンターは金属、ゴム、プラスチック、ガラス、コンクリート、細胞、皮革、チョコレートまで、数百種類の材料を印刷可能です。エンジンや回路基盤、義肢、住宅まで生み出しています。2000年代初頭まで、3Dプリンターは数十万ドルしました。しかし今では1000ドルせずに買えます。

ブロックチェーンブロックチェーンは分散型の、可変性のある、許容度が高く、透明性の高いデジタル台帳です。「分散型」というのは、広く共有される集合的データベースという意味です。「可変性がある」というのは、誰かが台帳に新しい情報を書き込むたびに、すべての台帳が更新されることを意味します。「許容度が高い」というのは、現金と同じように誰もが使用できるということです。最後に「透明性が高い」というのは、ネットワークに属する誰もが、ネットワーク上で行われるあらゆる取引を見られることです。身元の証明、資産の正当性、仮想通貨などで活用されます。表立っては目立ちませんが、裏方的な役割を果たすテクノジーです。

材料科学:材料科学は新しい材料の発見と開発に特化した学問分野です。オバマ大統領は「材料ゲノム・イニシアチブ」を発表しました。AIを使って元素の数億通りもの組み合わせを調べることで、膨大なデータベースを構築しました。物理的な世界の新たな地図を手に入れたのです。材料科学の進歩は、そのままデバイスの進歩に直結します

バイオテクノロジー:2001年、1億ドルと10年をかけた「ヒトゲノム・プロジェクト」が完了しました。現在、人1人のゲノム配列を調べるのにかかるのはほんの数日で、コストは1000ドルに満たない所まで下がりました。さらにCRISPR-Casシステムによって、DNAの塩基配列の一塩基単位での書き換えが可能になって来ています。これは、パーソナライズされた医療の時代の到来を予感させるものです。

 

「加速」がさらに加速する

イノベーションによって一つの作業の時間が減れば、他の作業をする時間が増え、更なるイノベーションが後押しされます。このように、「加速」することで、さらに技術の進歩が加速していくのです。

ラマヌジャンのような「天才」が発掘されやすくなる、コミュニケーションがしやすくなる、寿命が伸びことで1人が起こせるイノベーションが増える、といったことが加速の副次的な産物です。

 

まとめ

9つのテクノロジーを紹介しましたが、これらのテクノロジーがコンバージェンスすることによって、2030年までに私たちの日常は激変します。本書では買い物、広告、エンタメ、教育、医療、寿命、保険、金融、不動産、食料と、多岐にわたる分野の未来を予測しています。

情報量は多いのですが、ワクワクが止まらない一冊でした。

ぜひご一読あれ。

【書評・感想】LIFE <ライフ> 人間が知らない生き方〜「漫画」×「生物学」×「ビジネス書」〜

ここでは、『LIFE <ライフ> 人間が知らない生き方』のレビューをします。 

LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方
 

 本書は「漫画」×「生物学」×「ビジネス書」という、異色の一冊です。
本書の漫画を担当しているのは、漫画『今際の国のアリス』で有名な麻生羽呂先生です。

「ビジネス書」と本書の説明に書かれていますが、老若男女、高学年くらいの小学生から大人(ビジネスマン)まで、多くの人が楽しめる自己啓発書だと感じました。

動物の生態についての雑学的な知識を増やすことができて、より人間らしい生き方を学ぶことができる、まさに一石二鳥の一冊です。

20種類の動物のエピソードがあり、どれも非常に面白かったです。私が特に面白いと感じたのはペンギンのエピソードです。

新しいビジネスに挑戦する人は「ファースト・ペンギン」と呼ばれています。しかし、実際のファースト・ペンギンは自ら積極的に海に飛び込んでいる訳ではありません。後ろから蹴り落とされているだけなのです。
ペンギンたちは、一匹を犠牲にして、飛び込んだ先にシャチなどの天敵がいないか確かめています。ですが、ファースト・ペンギンが最もエサにありつきやすいのは事実です。

まとめると、本書は動物たちの面白い生態から人生を考えさせられる一冊です。性別、年齢問わず多くの人が楽しめると思います。家族で読んでみるのもいいかもしれません。

ぜひご一読あれ。

 

【レビュー・要約】『EXTREME TEAMS』〜最新の組織論〜

ここでは、ロバート・ブルース・ショー著『EXTREME TEAMS』を要約します。

本書では、チーム制の持つポテンシャルを理解し、新たなアプローチを実験していこうという意欲があるチームを「エクストリーム・チーム」と呼んでいます。

エクストリーム・チームの共通点として挙げられているのは以下の6つです。

 1.成果と人間関係の両立

~職場における社員のエンゲージメント・レベルは「職場に親友がいるか」という質問の答えとはっきり連動する~

成果を達成し、同時に適切な人間関係が成り立つ人間関係も構築することで、成果と人間関係はシナジー効果を生み出します。

しかし、成果と人間関係は対立しやすのもまた事実です。どちらかを極端に追求することで、他方が損なわれます。普通のチームは許容可能な均衡を求めて、どっちつかずの罠に陥ってしまいます。

エクストリーム・チームは両方をギリギリの先端まで求めることで、チームに突き抜けた成功をもたらします。 

 

2.執着心を共有する

~エクストリームなこだわりが、エクストリームな成果に。「何を」でなく「なぜ」売るか~

先鋭的企業は、社員やチームの大多数が同じ執着心を抱いています。
執着心を持って働く人は仕事を使命としてみています。執着心は「やり抜く力(GRIT)」につながります。

執着心があることで、間違った対象を追いかける、頑固になってしまうなどの問題点はあります。

しかし、「社員がただ仕事をこなすだけ」という方が問題です。振り切って大きな成果を生み出すのが、エクストリーム・チームです。

 

3.採用は能力よりも適正

~技術は後からでも教えられるが、情熱は教えられない~

先鋭的企業はスキルと同じくらいに企業文化に適するかをどうかを重視します。企業文化への適性は

「会社の価値観を支持しているか」

「成果を出すことを重視しているか」

「人間関係を大事に考えているか」

において重要です。

エクストリーム・チームは採用や昇進の評価において、これら3つの性質を審査する具体的なプロセスを整えています。

まずは、「会社としてチームとして自分たちは何を体現するのか」を明らかにすることが必要です。

 

4.ビジネスの焦点を絞ると同時に広げる

~難しいのは「何をしないべきか」を知ることだ~

先鋭的企業は自社の置かれたコンテクスト(流れや背景)を社内で広く積極的に周知します。その上で、必須かつ少数の戦略的優先事項を明確にします(3つか4つ)。優先事項を理解できるように、パフォーマンスを測る指標および説明責任の所在とともに具体的に提示します。

一方で、焦点を絞りすぎると墓穴を掘るため、顧客や収益獲得の新たな機会を積極的に試すよう奨励しています。先鋭的企業は新しいアプローチをあれこれ手を出し、小さい範囲で実験して、有望と見られるアイデアだけを次のレベルに進めていきます。

 

5.ハードかつソフトな企業文化の追求

~企業文化のベースには感情がある~

先鋭的企業は自社がどんな特性を持つ企業でありたいか、社員がどんな感情を抱いて働く企業でありたいか、を明確にします。

 そのうえで、エクストリーム・チームは以下の6つの文化特性を持っています。

「オールイン」=会社を100%信じ、献身的に取り組む

「自由裁量権」=自立・自律意識がある

「情報の透明性」=社内で情報をオープンかつ誠実に共有している

「説明責任」=パフォーマンスに対して、完全に責任を追う

「楽しむ」=仕事そのものを楽しんでいる。仲間との交流も満喫

「共同関係」=連帯感と助け合いの精神がある

 

6.気まずさを恐れない

~一般的な企業とチームは「末期的な『良い人』病」にかかっている~

 エクストリーム・チームは目標を達成するためには衝突や緊張関係が必要だと信じています。そのために、気まずさを恐れない環境、衝突を歓迎し生産的なものであるという空気を作ります。

そして、大胆無謀な目標を設定し、追求していこう、という主体的責任感をメンバーにもたせます。

生産的に衝突するために、少数・必須の低レベルの問題を回避し、最も違いを生み出す領域を絞り込むことが必要です。

 

まとめ

それぞれがユニークな才能や体験を持ち寄り、チームとして力を合わせ、個人ではできないものを生み出すことこそが、チーム形成の目的です。

エクストリーム・チームは、ビジネスと人間関係の両方を極限まで追求していく。エクストリーム・チームは諸刃の剣です。成果と人間関係の形成に徹底的な努力をしていかなければなりません。

終身雇用がメインの日本企業には合わない部分も多いかもしれません。しかし、終身雇用が限界を迎えつつある今、日本企業がどのような変革を遂げていく必要があります。企業の今後を考える上で、参考になる部分も多いと思います

ぜひご一読あれ。

【書評・感想】『図解de理解 行動経済学入門』〜行動経済学初学者におすすめ〜

今回はハワード・S・ダンフォード著『図解de理解 行動経済学入門』の書評をします。 

行動経済学とは、心理学の知見を経済学に応用して、新たな経済理論の構築を目指す学問です。

例えば、天気の良い日は天気の悪い日よりも株価が上がると言われています。これは伝統的な経済学では説明がつきません。伝統的な経済学は、人が合理的に行動することを前提としているからです。

人の行動には多くの例外があります。この例外に着目したのが、行動経済学です。

本書はタイトルの通り、行動経済学の入門書になります。

・一つ一つのトピックが簡潔にまとめられている
・図解つきでわかりやすい
行動経済学の基本的な考え方が網羅されている

以上のような特徴があり、行動経済学に興味がある初学者にはとてもおすすめできる一冊です。

本書を読んで、より専門的なことが知りたくなったら、著名な行動経済学者であるダン・アリエリー先生の『予想通りに不合理』やダニエル・カーネマン先生の『ファスト&スロー』を読んでみることをおすすめします。

『予想通りに不合理』はダン・アリエリー先生が奇抜な実験をしている点が面白いです。『ファスト&スロー』は行動経済学を真剣に勉強したくなったら必須だと思いますが文量が多くちょっと難しめです。

今回は以上です。
『図解de理解 行動経済学入門』はkindle Unlimitedで読むことが可能です。1〜2時間程度でサクッと読めます。

ぜひご一読あれ。

【レビュー・要約】『権力の終焉』〜権力に何が起こっているのか〜

モイセス・ナイム著『権力の終焉』をレビュー・要約します。

権力の終焉

権力の終焉

 

本書は2013年の刊行時から多くの企業のCEOや学者から絶賛されていましたが、Facebook  CEOのマーク・ザッカーバーグが立ち上げたブッククラブで取り上げたことをきっかけとしてアメリカで大ブレイク、21万部を超えるベストセラーとなりました。

本書は権力が衰退している現状を分析した一冊になります。国家だけでなく、政治、ビジネス、メディア、宗教に至るまで幅広い領域で権力の衰退が起こっていると主張しています。

それでは、本書の内容を要約したいと思います。

目次

権力について

本書における権力は「他人に何かをさせる能力、またはさせない能力」とされています。そして権力は以下の4つの方法で示されます。すなわち、物理的な力(軍や警官など)、規範(道徳や伝統、宗教的信条など)、売り込み・宣伝文句(説得者の目的または利益の促進に繋がるように他人に状況を理解させる能力)、報酬です。
権力を維持するためには「参入障壁」が非常に重要な役割を果たします。言い方を変えれば、物理的な力、規範、売り込み、報酬、あるいはその組み合わせを新しいプレイヤーに展開させないための障害です。技術、兵器、財産、法律などによって、新しいプレイヤーが既存の権力に挑むことを困難にしてきました。

権力が大きい理由

資金や兵器、支持者などが権力の源となります。これらを管理して効果的に行使する方法が必要です。
ここで重要になるキーワードが「取引コスト」というビジネス用語です。これは、売買契約の作成や履行のコストのことを指します。1930年代、イギリスの経済学者ロナルド・コースが提唱しました。
この考えが提唱された当初は産業組織の分野に影響を与えました。企業の規模や性質の議論に利用されたのです。企業が自社と対等な別の企業と取引をするよりも、様々な機能を内包してしまう方が、取引コストは安くなるケースがたくさんあります。企業が垂直統合(供給業者や販売業者を買収してすること)によって成長するかどうか、を説明することが可能になるのです。さらには、「取引コスト」は業界よる企業の輪郭、成長パターン、企業の本質そのものを決定します。

この「取引コスト」という考え方は産業をこえ、政府機関、軍隊、教会にも適用可能です。
取引相手を内部に「取り込む」垂直統合によって、新しい小プレイヤーにとっては競争して成功を収めるチャンスが小さくなる、という参入障壁になります。また、競争相手がもっと広く権力を獲得しようとするのを妨げる、という参入障壁にもなります。

以上のように、取引コストを下げるための垂直統合によって「権力=大きい」という等式が完成したのです。

近年起こった三つの革命

近年、巨大な権力が大きく衰退しているというのが本書の主張です。その原因となっているのが、豊かさ革命、移動革命、意識革命という三つの大きな社会変容です。

豊かさ革命は国家の数から人口、識字率、製品量、教育まで、あらゆるものの増加によります。

移動革命はヒト、モノ、金、アイディアがこれまで想像もつかなかったスピードで世界のあらゆる場所に向かって移動している現状を指します。

前の二つは理解しやすいと思います。意識革命はどういうことなのでしょうか?意識革命は先の二つの革命に伴う考え方や期待感、願望における大きな変化です。豊かさ・移動革命によって我々(特に中間層)は自分たちよりも多くの反映、自由、個人的充足感を享受している人々が多くいることを知りました。そしてそれと同じ水準に達したいと望み、そうなることを期待するようになりました。意識革命は「期待感の革命」と換言できるでしょう。

この三つの革命は、権力への挑戦を妨げる障壁となっていた物理的な力、規範、売り込み、報酬の全てを弱体化させています。(詳細は本書を読んでみてください)

マイクロパワーの出現

さらに、三つの革命は「マイクロパワー」を台頭させました。

マイクロパワーは大きさ、相対的なスケール、資産と資源の一式、中央集権、ヒエラルキー、これらを持たない組織や力です。すなわち、マイクロパワーは既存の権力の対局に位置する存在であり、既存の権力が育成と管理に多大な時間と努力を費やしてきたものが欠けている、という特質を持ちます。

本来、マイクロパワーは例外的存在でした。しかし、マイクロパワーは、確立されたプレーヤーたちが当然と考えていた多くの選択肢を否定させる原動力となっています。
マイクロパワーは既存の権力を疲弊させ、邪魔をし、弱らせ、サボタージュを仕掛け、そして封じ込めたりすることによって、巨大な敵に、反撃するだけの術もなく準備もできていないことを気づかせるのです。そして、既存の権力は規模が小さくなったり、権力の維持期間が短くなったり、影響力の範囲が小さくなったりしています

権力の衰退は歓迎すべきことか?

著者は権力の衰退は良い知らせであると述べています

まず、権力の衰退によって社会がより自由になり有権者によって選挙の機会と選択肢が増えることがあげられます。また、コミュニティをまとめる新しいプラットフォームが出現し、アイディアと可能性が広がります。さらに、投資と取引が増え、企業間の競争が激しくなり、それによって消費者の選択肢が増えます
こうした結果は世界共通ではなく、どの場合も失望させられるような例外はあるでしょう。それでも、おおまかなトレンドは明らかです。

反対に、権力の弱体化による危険性として、5つのリスクが挙げられています。無秩序、熟練の解体と知識の喪失、社会運動の陳腐化、集中力の持続時間の短縮、疎外感です。具体的には、権力の衰退は夥しい数の多種多様な犯罪者、テロリスト、もしくは別の悪意ある非国家主体を駆り立てている原動力になります。また、過激主義者の台頭、ビジネス上の詐欺や不法行為の機械の増加もあるでしょう。また、権力の衰退は集団行動問題を悪化させます。世界的問題への対応がより困難になるでしょう。

我々はどうすべきか?

権力が衰退していく流れは止めることができません。そして、権力の衰退にはメリットもデメリットもあります。そのような大きな変化の潮流の中で、我々は権力に対してどのように向き合えば良いのでしょうか?

まず、第一歩として、エレベーター式の思考を止める必要があります。つまり、国家を例にとれば、アメリカが凋落するとか中国が台頭するといったランク付をやめるべきだ、ということです。国家や政治運動、企業、宗教などの大きな単位のランク付ではなく、「内側」で何が起きているのか、を理解する必要があるということです。

次に「全てを単純化する輩」に注意しなければいけません。独裁はある意味非常にわかりやすかったのです。たくさんのマイクロパワーが台頭している今、世界は複雑化しています。その中で思考停止してわかりやすい極端な主張に煽動されることに十分気をつける必要があります。そのためには、権力の衰退を受け入れることが重要だと筆者は述べています。

そして、我々が政治システムをもう一度信頼できるようになることが必要です。そのために、政治は信頼の回復、政党の改革、一般市民が政治プロセスに有意義に参加できる新しい方法の追求、効果的な統治をおこなうための新しい機構の創造、国民国家が協調する能力を強化すること、これらを目標の中心に据えるべきだ、と著者は主張しています。

まとめ

本書『権力の終焉』は権力というものの歴史を紐解き、現代の権力の衰退を解説したものになります。
現状を知り、これからの権力の行方を考察する上で、参考になる一冊だと思います。

権力の衰退は国家、国際政治、ビジネス、宗教、軍事力など多岐にわたる分野で起こっています。
ブログ内では書き切れませんでしたが、本書ではこれらの分野における具体的な権力の衰退とその影響について論じています。

ぜひご一読あれ。

「新しい研究テーマ」の発案方法について【化学系向け…?】【雑記】

誰もやっていない研究をする。
世界に新しい知見をもたらす。

研究をしている方なら、誰しも憧れます。

しかし、そんなにポンポンと優れたアイディアが出たら、誰でも一流教授です。

テーマの発案方法なんて、講義では教えてくれませんしね。

特に博士課程の学生は自分のテーマだけでなく、

後輩のテーマも考えなければいけないケースが多いと思います。

 

私は頭の硬い平々凡々な学生だったのに勢いで博士課程まで進学してしまったため、新テーマを考える、ということにはとても苦労しました。

いかにしてこれまで研究されていないことを見つけるか。
つまり、「無いものを探す」ということになります。

ここでは、私なりのコツというか、フレームワークのようなものを紹介してみたいと思います。
理系、特に化学系向けになります。
少しでも何かの参考になりましたら幸いです。
(思いついたものを列挙しました。他にもあったら、また追記します)

 

0.知識を得る

新しいテーマを考えるには、当該分野の知識があることが大前提です。
現状の最先端を把握していなければ、思い付いた研究テーマが価値あるものなのか判断できません。

学部生レベルの教科書の知識は持っておきましょう。

その上で、まずはレビューを読むことをおすすめします。
代表的な文献がまとまっており、その分野の背景が理解しやすいです。
特にイントロダクションや結言に現状の課題や将来予測が書かれていることもあるので、よく読んでおいた方がいいです。
熟読するに越したことはないですが、全体を一通り読むだけでも効果はあります。

一つの分野には、だいたい小カテゴリーが存在しています。
レビュー、と一口に言ってもカバーしているカテゴリーの範囲は全く異なります。
当該分野がどのようにカテゴライズされているのか、に注目すると理解を深めることができます。

次に、当該分野の代表的な論文を読んでみましょう。
よくレビューで見かける論文や引用数の多い文献を読むと良いです。
その際は実験項まで読み込みましょう。
実験のやり方の部分に新テーマのヒントがある場合もあります。

さらに、ここ2〜3年の論文を読み漁りましょう。
ここまで来ると、当該分野の最先端が見えてくると思います。

 

1.ファクターを変える

比較的容易な新テーマを編み出す方法は、実験のファクターのうち一つ、あるいは複数を変えるというものです。

例としては、温度、濃度、元素、配位子、サイズ、比率、溶媒…色々なものが挙げられると思います。

 

2.複数のものを混ぜ合わせる

二つのものを混ぜ合わせる、という新テーマもあります。

二つの元素、触媒、溶媒などです。
思わぬ相乗効果が現れて、想定以上の結果が出ることもあります。
(日常的に、ノリと勢いで楽しくやってみましょう)

 

3.実験中の違和感を見逃さない

「いつも同じように実験をしているのに、以前と結果が違う…」
ほとんどの研究者はそういった経験をお持ちだと思います。
大方の場合は「ちょっとだし、気にしなくていいか」と忘れられてしまいます。

ですが、実験中の違和感は決して忘れないようにしてください。
後々に新しい気づきが加わると、新テーマのきっかけになりえます。
(反対に、実施中のテーマが破綻するきっかけになることもあります)

私は、小さな違和感に気付けるか、その違和感を大切にできるか、が優れた研究者か否かを決める一つの大事な要素だと考えています。

 

4.研究されてないカテゴリーを見つける

0.知識を得る で小カテゴリーに注目するといい、と述べました。
小カテゴリーが見えてくると、当該分野の中でも研究が進んでいる部分、進んでいない部分が見えてきます。
研究が進んでいるカテゴリーは多くの人が研究しているため、やることがほとんど残っていません。
研究が進んでいないカテゴリーに注目すると、新しいテーマは見つけやすいです。

また、新しいカテゴリーを自分で作る、という手段もあります。
例えば、

・あるカテゴリーは⚪︎と×を組み合わせている
・別のカテゴリーは⚪︎と△を組み合わせている
 →×と△の組み合わせはない

というような具合です。

 

5.異分野と融合させる

異分野に興味を持つことも大事です。
色々な分野を把握しておくと、新しい発想が生まれやすいです。
突飛な分野の融合ほど、誰も行っていないフロンティアである可能性が高まります。
(もちろん困難も大きいでしょうが…)

異分野融合は1人で発案したり、実施するのは難しい場合があります。
そのため、異分野の研究者との交流や学会発表を大事にしましょう。

研究仲間と話していると、異分野の問題を自分の専門分野を使えば解決できる、ということが往々にしてあります。
自分のテーマを積極的に学会などで発表して他者の意見をもらう、ということも新テーマを考える上で大きな刺激なります。
(異分野の研究者と話すと、学部レベルの知識が重要だと思い知らされます)

 

6.最新鋭の実験装置を使う

もしも所属の大学や研究機関に最新鋭の装置があったら、積極的に使いましょう。
既知のデータがあってそれと同じ結果であっても、「最新鋭の装置を使って調べた」というだけでも論文になったりします。
もし、定説と違ったデータが出たら、それは大発見かもしれません。
最新鋭の装置を使って調べたら定説が誤りだった、という発見は最近でもたくさんあります。
(くれぐれも慎重にデータを考察する必要があります)

 

まとめ

新しいテーマの発案方法、ということについてまとめてみました。

アイディアが急に浮かんでくることなどありません。
大切なのは、ずっと考え続けること。
故・外山滋比古先生は著書『思考の整理学』の中でアイディアを「熟成」させることが大事だと述べています。
自分の頭の中に知識を蓄えて悩み続けていると、ふといいアイディアが浮かんできます。
よく、お風呂に入っているときに思い浮かんだ、といったエピソードがありますが、
それは天から降ってくるわけではなく、熟成された結果だと言えます。

私も研究者として、日々悩む毎日です。
一緒に考え続けましょう。

【レビュー・要約】 LIFE SPAN③ 〜長寿によってもたらされる未来〜

LIFE  SPANの要約の3回目になります。

LIFE SPANは3部構成で、過去・現在・未来が描かれています。
過去と現在については、以前要約しています。興味のある方はぜひご覧ください。

ここでは、本書で描かれる未来についてまとめていきます。

 

目次

これから寿命は30年以上のびる

テクノロジーの発展、生活習慣の改善、薬剤の摂取などの全ての効果を足し合わせると30年以上寿命が伸びると筆者は予想しています。
平均寿命が110歳を超えるということです。
150歳を超える人も出てくるでしょう。
筆者はこれでも控えめな予想だと考えています。さらに伸びることも考えられます。
指数関数的な技術の進歩が期待できるためです。

しかし、寿命が伸びれば、社会も政治も経済も大きく変わらずにはいられません。

問題は山積み・・・なのか?

筆者は各種問題について、比較的楽観的な予測をしています。

  • 人口問題→人口の増加はいずれ止まる。人類が反映したのは、むしろ人口が増えたから。高齢者の問題は健康寿命への投資を増やすことで解決可能。
  • 経済問題→高齢者を上手に活用する制度ができれば、高齢化にはむしろ経済効果がある。一つの病気を治すのではなく、老化事態を食い止めることができれば、医療費の問題を解決できる可能性もある。削減された医療費は科学研究や教育に。
  • 大量生産・大量消費問題→科学技術の革新で解決できる。これからの時代はモノよりも経験が重視されるようになるだろう。
  • 就業問題→高齢者が若者の仕事を奪うことはないだろう。高齢者が働くことを許した方が、有意義な人生を送ることができる。

まとめ

筆者は気候や経済の問題に対して、病気や身体の不自由を奪う老化の治療が大きな効果を挙げることを期待しています。
(私個人としては楽観的すぎると感じてしましたが・・・)

老化が避けられない運命から完全に治せる病気になったとき、どのような未来が訪れるのでしょうか。
本書で挙げられている対策を実践しながら、楽しみに待ちましょう。