【書評】『異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』【レビュー・感想】
今回は『異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』の書評です。
目次
著者について
本書の著者はエリン・マイヤー氏です。フランスとシンガポールに拠点を置くビジネススクール、INSEAD客員教授であり、異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門としています。
著者は10年超の研究、数千人の経営幹部への取材を実施し、各国の文化を分析しました。そして、各国のビジネスにおける仕事の傾向を数値化して明らかにしたのです。
本書の内容
概要
本書で最も特筆すべき点は、ビジネス上のやりとりにおいて重要な8つの指標を数値化し、一眼でわかるようにしている点です。具体的に、8つの指標は以下の通りです。
- コミュニケーション(ハイコンテクストかローコンテクストか)
- 評価(ネガティブ・フィードバックが直接的か間接的か)
- 説得(原理優先か応用優先か)
- リード(平等主義か階層主義か)
- 決断(合意思考かトップダウン式か)
- 信頼(タスクベースか関係ベースか)
- 見解の相違(対立型か対立回避型か)
- スケジューリング(直線的な時間か柔軟な時間か)
上記の8つの指標を元に、異なる文化圏のビジネスマンが一緒に仕事をする場合、どのような点に気をつける必要があるか、ということが語られています。海外の方と一緒に仕事をする機会がある人は、本書を通して非常に有益な知見が得られるでしょう。
では、国際舞台に立たない人には関係ないかというと、決してそんなことはありません。異なる文化圏の考え方を知ることで、日本という国の文化をについて改めて学ぶことができます。
本書では、著者が海外の方であるにも関わらず、日本のビジネスシーンが頻繁に紹介されています。上記8つの指標において、日本は非常に極端な文化を有しているのです。国際的に日本の文化がどのような点が極端か、以下ではその一例を紹介します。
他国に比べて極端な日本の文化
国際的に見て、日本は最もハイコンテクストな国に位置付けられています。ハイコンテクストな文化とはすなわち、聞く側に空気や行間を読むことが求められる文化のことです。繊細で含みのあるコミュニケーションが良しとされ、直接的なメッセージが避けられる傾向が、日本は他国と比べて強いのです。
また、上司と部下の距離が近いか遠いか、という点についても日本は非常に極端な数値を示しています。日本は上司と部下の理想の距離は遠いものである、と考える傾向が最も高い国の一つです。他国では平等な人々のまとめ役、という認識を日本よりも強く持っています。
日本の特殊性を聞いたことがある人も多いと思いますが、他国と比較しても非常に極端な位置にいることが視覚化されており、とても驚かされるでしょう。
まとめ
本書を読めば、海外の方とビジネスで上手に付き合う方法を学ぶことができます。もちろん個人個人で考え方に違いはあるので、あらゆる場面であらゆる人に活用できるとは限りませんが、性格の違いを超えて文化の影響は非常に大きいもののようです。
そして、日本のビジネス文化を知る、という点においても非常に有益です。日本の中にいると、なかなか他国と比較できず、特殊な点を知ることは難しいです。本書を通して、日本が特異な文化を有していることを学ぶことができます。そのため、海外の方と交流する機会がない人にもオススメできます。
また、日本のビジネス文化の特徴と自分の考え方を比較できるので、自分の考えが一般的な傾向と合っているのか、はたまた違っているのか、ということを知る上でも一役買ってくれます。
様々な読み方、使い方ができる一冊だと思います。
ぜひご一読あれ。