理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

内向型の性質と内向型を活かすためのおススメ本2選

あなたは内向型ですか、それとも外向型ですか?
そもそも、その違いは何によって決まるのでしょうか?
外向型が褒め称えられる世の中ですが、内向型人間にも沢山の強みがあります。

内向的な性格に悩んでいる…そんな人は、変わる必要はありません。
その長所をとことん伸ばせば良いのです。

ここでは、内向型と外向型の性質の違いや内向型の強み、内向型の人におススメしたい本を紹介します!

目次

内向型・外向型の違いは何?

外向型と内向型は以下のような特徴を有しています。

外向型の特徴

・多様性を好み、単調だと飽きてしまう
・物事の中心にいるのが好き
・大勢の知り合いがいてその人たちを友達だと思っている
・大抵元気いっぱい
・聞き手になるより話し手になることが多い 

内向型の特徴

・自分1人か、2、3人の親しい人とくつろぐ方が好ましい
・話したり行動したりする前に、考えることが多い
・聞き役になることが多いが、自分にとって重要なテーマについてはたくさん話す
・狭く深く。量より質 

必ずどちらかに分類されるものではありません。
どちらにも当てはまる両向型が3分の2だそうです。
あなたはどちらの性質が強いですか??

内向型と外向型の型は遺伝で決まる!

内向型と外向型の違いはドーパミン感受性の違い、ということができます。

つまり、

内向型はドーパミン感受性が高い
外向型はドーパミン感受性が低い

という違いがあるのです。 

外向型はドーパミン感受性が低くよりたくさんのドーパミンを生産するために、どこかに行ったり、人にあったりしなければならないのです。

一方、内向型の人はドーパミン感受性が高いため、静かな活動でも十分なドーパミンを得ることができます。
外向型人間にとってちょうどいい刺激は、内向型の人にとっては強すぎるのです。

内向型にインドア派が多いのは、家の中でも十分な刺激が得られるからでしょう。

内向型の強み

エキスパートになれる

内向型人間の最大の強みは

専門分野でエキスパートになれる可能性が外向型の人よりも遥かに高い

ということです。

黙々と作業したり練習したりすることは内向型人間の得意とすることです。

その長所を最大限に活かしましょう。

内向型人間も良いリーダーになれる

リーダーを務めるのは外向型人間の専売特許と思われがちですが、内向型人間もリーダーシップを取ることができます。

目的意識のある人々を率いる場合は、内向型のリーダーの方が望ましいという傾向があります。

内向型人間はよく人の話を聞き、部下の自主性を重んじるからです。

対人関係においても、感受性や共感力、内省力の高さは内向型人間の大きな武器です。
その長所を最大限に活かしましょう。

世の中は外向型人間を賛美しすぎている

現代社会において、外向型人間が賛美されているのは、世渡り上手でアピール上手だからだと思います。
会社でも発言が多く、広いネットワークを持つ人間が出世に有利です。
そうして、ほとんどの人は「外向型であるべきだ」という教えを刷り込まれているのです。
このような押しつけによって内向型は短所だと認識されています。
しかし、ここまで見てきたように、内向型にはたくさんの強みがあるのです。
そのことを理解して、内向的な性質を伸ばすことに内向型人間は集中しましょう!

内向型を理解して活かすためのおススメ本2選

本記事は以下の2冊を参考にしました。
どちらもわかりやすく、内向型・外向型の性質を理解する上で非常に参考になります。

内向型を強みにする』は本ブログでも紹介したことがあります
ぜひご一読あれ。

内向型を強みにする

内向型を強みにする

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【書評・要約】『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』~リーダーの思考法~

リーダーに必要な考え方とはどのようなものでしょうか?

そんな悩みを抱えている方にお勧めの一冊があります。
それが本書、『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』です。

著者について

本書の著者は岩田松雄氏。
スターバックスコーヒージャパン株式会社CEO、株式会社ザ・ボディショップ代表取締役社長などでトップを務めた方です。

本書の概要

複数の上場企業でトップを務めた岩田氏が、周りに推されるリーダーになる思考法をまとめたのが本書です。

「考え方」「コミュニケーション」「マネジメント」「決断」「行動力」「読書術」「人間力

に関する岩田氏の哲学が合わせて51個載っています。

オススメしたい人

チームのリーダーをされている方におススメです。
いわゆるビジネス書に分類される本書ですが、ビジネスマン以外の人にとっても参考になるでしょう。

要点まとめ

ここからは、私が本書で印象に残った点を紹介します。

トイレに行く姿まで常に見られていると意識する

ある企業で社長になったとき、

「トイレで見かけた岩田さんが、なんとも元気のない姿だった」

という噂が流れたそうです。
部下は上司の一挙手一投足が気になるもの。
社長ともなればトイレに入る姿まで見られているのだ、と岩田氏は痛感したそうです。

リーダーを務めている方は、自分が見られている意識はお持ちでしょうか?
部下は何気ない様子もつぶさに観察して評価を下しているものです。

行動力は自己管理から

岩田氏は午前0時には寝ていたそうです。
そのために、会食や二次会には参加しないようにしていたとのことです。
定期的に運動してリフレッシュすることも心掛けていました。

よい決断、高い行動力はよい体調からスタートする。
リーダーに限ったことではありませんが、不摂生な生活は避けるに越したことはありません。

リーダーの方から部下の意見を積極的に聞く

岩田氏は「俺についてこい」という態度に否定的です。
ついていきたいと思われるためには「一緒にやっていこう」という姿勢を打ち出すことが大事だと述べています。

そのためにもリーダーの方から部下の意見を積極的に聞いていたそうです。

もとより部下は話をしにくいし、意見をしにくいもの。
リーダー側から近寄っていく必要があります。

会議の場でも、部下は上司とは反対の意見は言いにくいものです。
そこで岩田氏は先に部下に発言させるようにしていたそうです。
そしてその発言をメモし、聞いている姿勢を部下に見せていたとのことです。

若手の意見や発言に耳を傾けるのも、ついていきたいと思われるリーダーの大事な姿勢です。

まとめ

本書は複数の企業でトップを務めた岩田松雄氏がリーダーの考え方をまとめた一冊です。
日常の中でリーダーはどのようなことを意識して行動しているのか、がわかります。

一見当たり前に思える点もありましたが、ハッと目を開かされる考え方、つい疎かになりがちな行動など、参考になるポイントは多くありました。

ぜひご一読あれ。

【書評・要約】『失敗の科学』〜失敗を次に活かす〜

本記事は『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』の書評・要約になります。

著者について

本書の著者はマシュー・サイド氏。
ジャーナリストですが、卓球の元オリンピック選手という異色の経歴を持っています。
多様性の科学』『きみはスゴイぜ! 一生使える「自信」をつくる本』などの著書もあります。

dadada-business.hatenablog.com

本書の概要

本書はタイトルの通り失敗に着目しています。

  • 大きなミスはなぜ起こるのか
  • 失敗とどのように向き合うか
  • 失敗を隠す心理
  • 失敗から学習する組織の作り方

などの内容がまとめられています。
個人として気をつけることだけでなく、組織として失敗を防ぎ失敗を次に活かすための方法が記されています。

問題は当事者の熱意やモチベーションにはない。
改善すべきは、人間の心理を考慮しないシステムの方なのだ。

本書ではこのような考え方のもと、失敗に関する人の心理を解き明かしながら実際的な解決策を提示しています。

オススメしたい人

組織で働くビジネスマンには多くの学びがあると思います。
ビジネスマンに限らず、組織に属している人、運営している人にも強くオススメしたいです。

要点まとめ

ここからは、私が特に印象に残った点をいくつか紹介したいと思います。

気をつけるべき人間の性質

失敗から学習する組織を作る上で、気をつけるべき人間の性質を4つ紹介します。

集中しすぎ

一つ目は集中しすぎるとミスにつながる、ということです。
集中はいいことのように思われますが、集中し過ぎてしまうと周りが見えなくなったり、時間の間隔が麻痺して時間が早く過ぎ去ってしまったりします。
集中しすぎがミスを誘発しうる、ということは留意しておく必要があります。

認知的不協和

二つ目は「認知的不協和」です。
自分の思い込みと事実が一致しない時に生じる不快感やストレス状態のことを指します。
自分の思い込みを修正できれば問題ないのですが、できないときは事実を曲解してしまうことがあります。
自分が作り上げた嘘を信じ込んでしまうことになるのです。
自己を正当化せず、完璧主義から抜け出す必要があります。

純化

三つ目は「単純化です。
分かりやすいストーリーや幾つかの目立った結果には注意しなければなりません。
後付けでストーリーが作られてしまうこともあります。
魅力的なストーリーを見たら因果関係や統計データを良く確認した方が良いです。

犯人探しバイアス

四つ目は「犯人探しバイアス」です。
これは単純化を好む性質の延長線上にあります。
ミスは一人の犯人の行動に起因すると考えがちです。
さまざまな角度から物事を検証すること、一人を執拗に避難しないこと。
これらがミスを活かすために重要な姿勢です。

人の心理を考慮した組織づくり

以上のような人間の心理を理解した上で、失敗を次に活かす組織づくりのためにはどのようなことに留意しなければいけないのでしょうか。

まずはミスを非難することは避けましょう
懲罰は必ずしも学習に有効ではありません。
時として隠蔽につながります。

きついヒエラルキーも良くありません
部下が上司に報告しずらい空気を作ってしまいます。

すなわち、集団でミスを容認できることが肝要です。
失敗が起こる前提でシステムを構築することで、失敗を無駄にしないことができます。

また、日々小さな改善を積み重ねることも意識すべきです。

何か大きなプロジェクトを行う際には、事前にあらゆるミスを想定することも効果的です
(本書では事前検死と呼ばれています)

まとめ

人間の心理に配慮し、ミスに寛容で多様な視点でミスを分析できるシステムを作るにはどうすれば良いかをまとめた一冊です。
具体例、科学的知見どちらも豊富で、著者がジャーナリストというだけあり文章も読みやすいです。

著者の他の著作同様、強くお勧めできる一冊です。

ぜひご一読あれ

【書評】『つくられた格差』〜アメリカの格差と税制の分析〜

本記事は『つくられた格差~不公平税制が生んだ所得の不平等~』の書評になります。

著者について

著者はエマニュエル・サエズ氏ガブリエル・ズックマン氏

エマニュエル・サエズ氏はトマ・ピケティの共同研究者で、1980年以降、著しい格差の拡大を明らかにしました。
この研究結果は「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」運動にも影響を与えたそうです。

ガブリエル・ズックマン氏はカリフォルニア大学バークレー校で経済学と公共政策の教授を務めています。
富の蓄積と分布を世界的・歴史的な視点から分析しているそうです。

本書の概要

アメリカの税制について詳しく分析した一冊です。
日本に関することは書いていません。

本書ではアメリカの格差が大きく広がった理由は富裕層が税金を支払わなくなったためであるとしています。
アメリカの所得と税の歴史や統計の解析を詳細に行い、現在の税制の問題点を指摘しています。
具体的には租税回避産業、資本所得への課税などです。

詳細な分析がなされており、アメリカの税制の問題点を浮き彫りにしています。
しかしながら、内容は全体的にかなりマニアックです。
日本のことは書かれていませんが、水平展開して考えることはできるでしょう。

オススメしたい人

・格差に興味があり、原因を知りたい人(特にアメリカの現状)
・税制の勉強をしたい人

是非ご一読あれ。

【書評・要約】『シャーデンフロイデ』〜現代社会の病理の象徴〜

本記事は中野信子さんの著書『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感 (幻冬舎新書)』の書評・要約になります。

著者について

著者は中野信子さん。
脳科学者であり、テレビのコメンテーターとしても活動中です。
本書の他にも『サイコパス (文春新書)』『キレる!(小学館新書)』など、多くの著書があります。
書店で著者の本を見かけたことがある人も多いと思います。

脳科学者として、人間の脳に関わる多くの著作を世に送り出しています。

本書の概要

今回紹介する本のタイトルにもなっている「シャーデンフロイデ」。
本書では以下のように説明されています。

シャーデンフロイデ」は、誰かが失敗した時に、思わず湧き上がってしまう喜びの感情のことです。

そういった感情に心当たりのある人がほとんどではないでしょうか。
それと同時に、そんな感情を抱いてしまう自分に嫌悪感を持つ人もいると思います。

一見不要に思える「シャーデンフロイデ」という感情。
本書では、人間がシャーデンフロイデを抱く脳のメカニズムや、
進化の過程でなぜシャーデンフロイデが生き残ったのか、
といった驚きの事実が説明されています。

さらに、イジメや“不謹慎狩り”などに関する脳科学的な説明も述べられています。

オススメしたい人

脳科学や心理学に興味がある人。
シャーデンフロイデ」という感情の正体を知りたい人。
イジメや“不謹慎狩り”の理由が知りたい人。

要点まとめ

ここからは、私が特に面白いと思ったポイントをまとめます。

シャーデンフロイデを持つ理由

非常にいやらしい心の動きであるシャーデンフロイデ
なぜ、進化の過程を経てなお、シャーデンフロイデという感情は消えずに残ったのでしょうか。

その答えを端的に言ってしまえば、シャーデンフロイデは集団にとって都合の悪い個体を標的として「発見」し、「排除」するために使われるからです。

集団からはみ出す者を叩く。
そうすることで、人類は安定な社会を形成してきたのです。
安定な社会を築いた方が、人類が生き残る確率が高かった。だから、シャーデンフロイデが残った、と考えられます。

不謹慎狩りの正体

不謹慎狩りは、コロナ禍でもよくニュースになります。
シャーデンフロイデはという感情はその基礎であり、「不謹慎なヒト」を検出するのに役立っていると言えます。

そして、
“自分は正しい。「ズル」をしている人が許せない。だから自分が暴力を振るっても許される”
そんな心理状態によって「不謹慎なヒト」に制裁を加えたとき、本人の脳内にはドーパミンが分泌されます。

これも冷静に考えれば、不思議な話です。
制裁を加えようとすれば、相手から反撃を喰らう可能性も大いにあり得ます。
個人としては、時間も労力も損につながる可能性があります。
しかし、人類はドーパミンを分泌してまで、「不謹慎なヒト」に制裁を加えるのには理由があります。

それは集団を維持するためです。
集団のルールから逸脱した人を潰すことで、集団の崩壊を防ぐことができるのです。

結論を言えば、誰かを叩く行為というのは、本質的にはその集団を守ろうとする行動だと言えます。
不謹慎狩りは人間の高い向社会性によってもたらされているのです。

まとめ

本書はシャーデンフロイデという感情の正体を解き明かしています。
シャーデンフロイデ現代社会が抱える病理の象徴ということができます。
シャーデンフロイデの根幹に関わる脳内物質についても、本書の中では詳しく解説されています。

シャーデンフロイデ』という取っ付きにくそうなタイトルですが、中身は非常に読みやすく、かつ驚きに満ちた一冊です。

是非ご一読あれ。

【書評・要約】『LIMITLESS 超加速学習』〜学びを加速する〜

本記事は『LIMITLESS 超加速学習―人生を変える「学び方」の授業』の書評・要点まとめになります。

著者について

本書の著者はジム・クウィック氏
記憶力の改善、脳の最適化、加速学習の分野で知られる世界的エキスパートです。
幼い頃に脳に重い障害を負いました。
学校では「学び方を学ぶ」機会が学業でたいへん苦労したそうです。

そこで著者は脳のパフォーマンスを高める手法の開発に乗り出しました。
脳のコーチング歴は20年以上になり、ハリウッドの大物からプロスポーツ選手、Googleなどの法人顧客まで、多くの人にコーチングを実施しています。

本書の概要

本書は最前線研究成果から古代の知恵まで、幅広い勉強法をまとめています。
内容はマインドセットから具体的な手法、健康の維持方法にまで至ります。
本書を読むことで、学び方に関する重要なことを一通り学ぶことができます。

また、事実を淡々の述べるタイプの本ではなく、著者が熱意を持って語りかけるような文体で書かれています。
感情的にも学びたくなる気持ちにさせられました。

オススメしたい人

勉強に困っている高校生、大学生、社会人。
読みやすいこともあり、幅広い年齢層にオススメできます。

要点まとめ

ここからは、私が特に面白いと感じたポイントをまとめます。

ポモドーロテクニック

人間の集中は10〜40分で自然と弱まってしまいます。
また、人間は最初と最後が記憶に残りやすいということも知られています。
それぞれ、初頭効果と親近効果と呼ばれています。
集中力の問題と記憶の性質を利用するのがポモドーロテクニックです。
これは25分の集中と5分の休憩を繰り返すというものです。

2時間休みなしで読書するよりも25分+5分を繰り返すことが有効なのは、休憩も重要な役割を果たすからです。
休憩を挟むことで、咀嚼したり考えたりする時間をとることができます。
そうすることで、記憶に定着しやすくなるのです。

嗅覚を活用する

嗅覚には他の感覚と異なる性質を持っています。
それは、嗅覚は感情や記憶を刺激する、というものです。

外から入ってきたにおいはまず、嗅球という、鼻の奥から脳の底部にかけて延びる組織で処理されます。
嗅球は扁桃体と海馬と直接つながっているます。
どちらも感情や記憶と関わりが深い脳の領域です。
そのため嗅覚は他の感覚よりも感情や記憶を強く刺激すると言われています。

嗅覚のこの性質を利用して、学びを効率化できます。
ペパーミントとレモンは集中力を高めます。
また、ローズマリーの香りは記憶力を改善します。
他にもリラックス効果がある香りもあります。

香りをうまく活用するだけで、学びが一層効率的になるでしょう。

読書スピードを上げるために

読書スピードを上げることで、学習はより効率化します。
読書スピードが遅い理由として、返り読みしてしまう、頭の中で音読(サブボーカライゼーション)してしまうといったが挙げられます。

返り読みを防ぐ手段として、指を使って読むことが有効です。
手を動かすスピードを徐々に上げていけば、読むスピードも上がっていきます。

サブボーカライゼーションを防ぐ手段としては、頭の中で数字を数えることが推奨されています。
1、2、3…と数字を数えながら読書をすると、頭の中で音読できなくなります。
こうしたことから慣れていき、サブボーカライゼーションを止めることができれば、読書スピードは一段と上がるでしょう。

まとめ

本書は勉強方法についてまとめられた一冊です。
章の初めに「本章の問い」があったり、ところどころに「やってみよう!」といった項があったりすることで、内容が頭にも残りやすいと感じました。

学び方を学べる、良い一冊だと思います。

是非ご一読あれ。

【書評・要約】『多様性の科学』〜複数の視点を持つ組織〜

本記事は『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』の書評・要点まとめになります。

目次

本書について

著者について

本書の著者はマシュー・サイド氏。
英『タイムズ』紙の第一級コラムニスト、ライターです。
リポーターやコメンテーターとしても活動しています。
組織の失敗に着目した著作『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』も話題になりました。
本書『多様性の科学』はマシュー・サイド氏の新刊になります。

本書の概要

本書はタイトルの通り、多様性に着目しています。
考え方が異なる人々の集団が大きな成功をもたらす事を様々な角度から検討しています。

いわゆる「成功術」について語られる本は、「個人」に焦点が当てられることが多いのが実状です。
それに対して本書は組織の生産性を高める方法を記しています。
凋落する組織と複数の視点で問題を解決する組織、その違いは何か?
そのキーワードが多様性なのです。

本書は多くの実例を挙げながら、

  • 画一的集団の問題点と多様性ある組織の強み
  • ヒエラルキーがもたらす罠
  • 組織にイノベーションをもたらす方法論
  • 「平均」と「標準化」の落とし穴

などを説明しています。
著者がコラムニストというだけあり、非常に読みやすく理解もしやすい一冊になっています。

オススメしたい人

仕事でチームを率いる立場にいる方や人事担当の方には強くオススメできます。
組織のデザインや運営方法について、多くの学びがあることでしょう。
学校の先生やスポーツチームのリーダーも、大いに参考になるかと思います。

本書の要点

以下では、私が興味を持った点についてまとめます。

多様性が重要になるのはどういう問題か?

多様性は、全ての問題に対して効果を発揮する訳ではありません。
単純作業を繰り返すタスクの場合、その作業がとにかく早い人を集めることが最もその問題を解決することにつながります。

多様性が重要になってくるのは経済予測のような「複雑な問題」です。
同じ特徴の者ばかりでは、優秀な人が何人集まったところで、盲点は同じです。
みんな揃って同じ間違いを犯すことになります。

さまざまな知識や考え方の枠組みが組み合わさることによって、複雑性の高い問題に対して強い力を発揮することができます。

本書では、例として経済予測の問題が取り上げられています。
デューク大学のソル教授はエコノミストによる経済予測を分析しました。
当然、当たっている人も当たっていない人もいました。
トップの成績を収めたエコノミストの正解率は全エコノミストの平均より約5%以上高かったそうです。

個人で差がつくのは当たり前ですが、実験が興味深いのはここからです。
ソル教授は上位6人のエコノミストの予測の平均も出したのです。
すると、個人トップのエコノミストの予測よりも、6人の平均の方が15%も高かったのです。

エコノミストは経済予測をする際に独自の経済モデルを使用します。
しかし、完璧な経済モデルは存在しません。
いくつかの結果を組み合わせることで、より確かな全体像が見えてきたのです。

この結果は複雑な問題に対しては「集合知」が有効に機能したことを示しています。

「支配型」ヒエラルキーと「尊敬型」ヒエラルキー

どんな集団にもヒエラルキー(階層)が存在します。
通常、集団にはリーダーが必要です。
リーダーが賢明な決断を下すには、その集団内で多様な視点が共有されていることが肝心です。
では、組織は「ヒエラルキーと情報共有」あるいは「決断力と多様性」のバランスをどう取ればいいのでしょうか?

それを理解するために、本書ではヒエラルキーには2つの形があることが紹介されています。
「支配型」ヒエラルキー「尊敬型」ヒエラルキーです。

支配型ヒエラルキー

支配型ヒエラルキーは、リーダーが威圧的であったり攻撃的で、褒美と罰でメンバーを操作するような状態です。
人類だけでなく、霊長類などにも見られます。
誰かの地位が上がれば他の誰かが蹴落とされます。
裏切りや報復などの行為が横行し、常に周りを警戒し続けなければなりません。
そのため、支配型ヒエラルキーは「ゼロ・サム」環境なのです。

尊敬型ヒエラルキー

一方で尊敬型ヒエラルキーは周りが自由に判断してリーダーを敬い、相手に敬意や好意を表します。
尊敬型ヒエラルキーの場合、リーダーの寛容な態度がフォロワーに影響を与えます。
尊敬型のリーダーが知恵を共有すれば、集団全体に寛容で協力的な態度が浸透します。
人を助けることで、相手ばかりでなく結局自分にもプラスになります。

したがって、尊敬型ヒエラルキーは「ポジティブ・サム」環境が強化されるのです。

尊敬型ヒエラルキーで多様な意見を集める

支配型ヒエラルキーのチームではメンバーは自分の意見を発信しにくい問題があります。
新たなアイデアを出したり、様々な角度から問題を検討する必要がある場合は尊敬型ヒエラルキーが有利なのです。
この考え方は「心理的安全性」の理論にも符合します。

多様性のあるチーム作れば万事解決するわけではありません。
多様性の効果は、その組織の環境にも大きな影響を受けるのです。

多様性が引き起こすイノベーション

イノベーションにも多様性は大きく関係しています。
イノベーションには2種類あります。

一つは段階的にアイデアを深めていく「漸進的イノベーション
もう一つは異分野のアイデアを融合する「融合のイノベーションです。

融合のイノベーションはどんな人が起こすのか

本書で注目しているのは、融合のチャンスを掴む人とその違いは何か、という点です。
なんと、大抵の場合、手に届かないからではなく、その可能性に自分から背を向けてしまうためだそうです。

長いキャリアを持つ人であればあるほど、従来の思考の枠組みにとらわれがちです。
ミシガン州立大学のある研究チームはノーベル賞受賞者とその他の科学者を比較しました。
その結果、ノーベル賞受賞者はその他の科学者に比べて

  • 楽器を演奏する者が2倍
  • 絵を描くか彫刻をする者は7倍
  • 詩か戯曲か一般向けの本を書くものは12倍
  • マチュア演劇かダンスかマジックをするものは22倍

多かったそうです。
様々な分野に触れることで、異なる角度から問題を眺めることができるようになると言えます。

ネットワーク効果

イノベーションを起こす重要な鍵は「アイデアの共有」にあります。
イデアは物理的な制約がありません。
一旦共有されると、他のたくさんのアイデアと融合される機会も増えます。
すなわち、多様性に富んだネットワークを形成し、アイデアを共有することでアイデアが融合される機会も生まれるのです。

まとめ

本書には、組織における多様性の重要さをまとめられています。
また、標準化することの危険性やエコーチェンバー現象などについても述べられています。

豊富な実例と共に学術的な研究成果も掲載されており、説得力ある一冊となってます。

ぜひご一読あれ。