理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

【書評・要約】『統計で考える働き方の未来ー高齢者が働き続ける国へ』〜老後も働く覚悟はあるか〜

今回は坂本貴志著『統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ (ちくま新書)』を紹介します。

本書はタイトルの通り、さまざまな統計を用いながら働き方の未来を考える本となっています。

格差は実際に広がっているのか、賃金は下がっているのか、年金は無くならないか、仕事は無くならないか、といった疑問に対して、統計データを参照しながら現状分析と将来予測を行なっています。

 

本書のポイントは以下の通りです。

  • 平均賃金が低迷しているように見えるのは、女性と高齢者の労働者の増加が原因。非常に皮肉な結果であり、平均賃金を議論するのはあまり意味がない。名目雇用者報酬は上昇している
  • 働き方改革によって、長時間労働の是正、テレワークの推進など新しい働き方の萌芽している
  • フリーランスも増加している。若者の働き方のイメージが強いが、25〜34歳が28.3万人、65歳以上が113.3万人
  • 働き方改革猛烈な働き方を是正し、生涯現役をさらに後押しするための施策
  • 年金の支給額はおそらく1〜2割減る。老後に贅沢な暮らしをしたかったら、2000万円では足りない。
  • 働き方改革は若者が高齢者を支えるシナリオから、高齢者が自ら働く自助のシナリオへ舵を切った、大きな転換点かも知れない
  • 現場労働は人手不足。AIやIoTが発展しても大きくは変わらないだろう。逆に、手に職をつければ安心というわけではなく、データからは高齢になっても続けられる専門技術職は思いの外少ない
  • 悠々自適な老後を送ることはもはやない。高齢世代も、細く長くはたらき続ける必要がある。悠々自適老後を放棄して、痛みを受け入れる覚悟はあるか。それが今問われている
  • 逆に、イノベーションがなんとかしてくれるだろう、なんて政府が言い始めたら、おしまい

統計データが炙り出したのは、我々への重たい問いでした。

「悠々自適な老後を諦める覚悟はあるか?生涯働く覚悟はあるか?」

 

本書は様々な統計データを用いて、ファクトフルに現在の働き方を見つめ、将来を考えています。
ここでの要約では、十分に根拠を示せていないため、納得できない点も多いかも知れません。
なぜこのような結論に至ったのか、どのような統計データが使われているのか、本書を読んで確認していただければと思います。

本書は、特に20代〜40代の人にぜひ読んでいただきたい一冊です。

ぜひご一読あれ。