理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

会社で世代間の分断はなぜ起こっているのか?

最近本屋に行くと、Z世代やゆとり世代の行動や関係性の築き方を説明する本を数多く見かける。多くは若手世代の部下を持った上司世代が手にとって読んでいるのだと思う。どうやら世代間の分断によって、会社内でのトラブルが起こっているらしい。

私は30歳でゆとり世代に入るのだが「これまでの世代と昨今の若者は何が違うのか」「会社で対立を産まないためにはどうすればいいか」という疑問を持ち、世代論を論じた本や関連の書籍を何冊か読んでみた。ここでは、そこから学んだことや仕事に活かしていきたいと感じたことをまとめてみたい。

なお、ここではゆとり世代以下が若手、という大まかな定義をとした。

今の若手世代の特徴

まず疑問に思ったのは、若手世代が上からどのようにみられているのか、ということである。

「まじめ・優秀・勤勉」といった特徴があることが複数の本で書いてあった。
その一方で「大人しい」「人付き合いが悪い」「ガツガツしていない(出世に興味がない)」ということを上の世代は問題視しているようだ。
若者が飲み会に参加しない、という話は誰しもが聞いたことがあるだろう。

これは「承認」と「効率」に関する価値観が世代によって大きく異なるためだ。

若者も認めてもらいたい。褒めてもらいたい。しかし、悪目立ちしたくないと思っている。
そして、無駄や理不尽を徹底的に嫌う。高い生産性を求める。飲み会は無駄なのだ。

 

ゆとり教育スマホと社会の影響

なぜこのような価値観を持ったのか。それはゆとり教育」と「スマホ」と「社会的な環境」の影響だ。

ゆとり教育」では関心・意欲・態度が重視されるようになった。本来そこで求めていたものは「協調」だった。しかしその結果は「同調」だった。みんなと同じで目立たないことを若者は処世術として身につけてしまった。

また、若者は「スマホ」を子供の頃から扱ってきた世代である。スマホググる習慣が身に染み付いている。答えはいつでもGoogleが教えてくれる。非常に効率的だ。それがすぐに答えを求めるわがままさを持つ結果となった。そして、若者の大半はSNSをしている。いいね!をもらう競争にも晒されているのだ。

スマホゆとり教育が組み合わさった影響で、同調する力を身につけた一方でいいね!をもらうために競争しているというところが、真面目でも目立つことを嫌うメンタルにつながっている。『先生、どうか皆の前でほめないで下さい―いい子症候群の若者たち』という本がある。この強烈なタイトルがその現状をよく現しているだろう。

「社会的な環境」も大きく変化した。無理して苦労せずともそこそこの生活を送ることができる。デフレが長く続いて日本が良くなる未来も見えない。努力をしたくなくなるのも仕方がない。スマホ一台であらゆるエンタメを楽しめるのだから。

ここまでをまとめると、

ゆとり教育スマホ、社会的な環境の変化の影響で、これまでの世代とは異なる承認と効率に関する価値観を身に付けたため、真面目な一方で目立つことは嫌う

という矛盾した特徴を持っているのが今の若手世代だと言える。

 

矛盾した若者世代

そう、若者世代は矛盾しているのだ。行動と心の中で思っていることが違うことが多くある。だからこそ、上の世代は若者の理解に苦しんでいる。

例えば、「はい」という返事をする割になかなか行動しない、昨日まで普通だったのに急に会社を辞める、といった行動をとる。

それは「体面としてはよくしなければならない」しかし「やりたくないことはやりたくない」という二つの感情を抱えているから、というのが多くの本を読んで得た私の結論だ。

 

なぜ昔の人は飲み会に参加したのか?

上の世代の人々も、やりたくないことはやりたくないだろう。行きたくない飲み会も沢山あったに違いない。しかし、それでも参加した。
それは、我慢すれば会社での出世の道が開けたからだ。

昔の会社は「タテ社会」であった。タテ社会とは、資格ではなく場所によって繋がる社会のことである。会社という場所に集まっただけの社会なので、脆さがある。その脆さを補うために、タテ社会では感情的な結びつきを求めた。その見返りが出世や年功序列である。そのようなタテ社会では情報も限られ、隣の会社は敵、という考えに至ることも多くなる。忖度も蔓延っていた。会社の掟に従わなければ、厳しい状況に陥ってしまう。飲み会に参加するなど、会社に奉公することに十分な意味があったのである。当時はそれでうまくいっていたのだ。

それが現代になり、インターネットが発達、情報が広まり、転職も当たり前になった。会社も社員を守りきれず、年功序列も崩壊一歩手前だ。若者が会社にしがみつく理由がなくなったのである。

 

これから求められる関係性とは?

それでは、これからの若手世代と付き合うために、上の世代は何をすれば良いのか?

今の若者は横のつながりの方が心地よいと感じる。そのため、主従関係ではなく、どちらかと言えば、仲間のような関係性を築くことが必要だ。本によっては別の表現がされているが、同様のことが述べられていた。支配ではなく、心理的安全性が高い職場を築くことが求められている。

加えて、若者は我が儘だ。感情的に納得がいかないことはせず、忖度もしない。だからこそ、動いてもらうためには説明力、プレゼンテーション能力が必要になる。それは会社の無駄を見直すという意味でも、重要なことだろう。

若手世代はどうしたら良いのだろうか?

若手世代は安定を求めて苦労することを嫌っているのはよく分かっている。私もゆとり世代だから。しかし、安定とはなんだろう?苦労せずに手に入る安定などあるのだろうか?そんなものは本当は存在しないのだろう。目を醒さなければならない。

同調圧力を感じて目立ちたくないのも分かる。だが、あなたはその空気を作る側に立っていないだろうか?出ようとしている杭を、若手世代が団結して引っ張り上げることが大事なのではないだろうか。

加えて、若手からも上の世代に話しかけなければならない。諦めた人も多いのだろうが、上の世代の人にもう一度仕事の質問をしてみてはどうだろう。

結局、どちらの世代からも歩み寄りが必要だ。

 

まとめ

なんとなく疑問に思って勉強し始めた世代間の分断。その原因は社会構造にまで及ぶ根深い問題だった。私の頭を整理するための雑多な文章になってしまった部分はあるが、何か参考になる部分があれば幸いである。

 

参考文献一覧