理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

欠乏状態が招く事態について

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最近、父親が女の子を車内に忘れられてしまう、という悲しい出来事がありました。

なぜこのようなことが起こったのか、推測することしかできませんが、 一つの可能性を考えてみたいと思います。

これは父親を許す許さない、といった類の話ではありません。

私の意見も特に述べません。

何百とある考え方のうちの一つを示したい、

ということが本ブログを書いたモチベーションです。

  

ここで紹介したいのは「欠乏」という視点です。

欠乏に関する詳細は『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』に詳しいです。

欠乏とは、何かが足りない!という状態です。

複数の仕事に追われて時間がない、という心理状態は誰しも思い当たる節があるのではないでしょうか。

時間以外にも、金銭問題や貧困も欠乏に結びつけて考えることができます。

 

欠乏は心を占拠します。

飢えた人は食べ物のことしか考えられなくなります。

欠乏はただの不満ではなく、人の考え方を変えてしまいます。

望むかどうかに関わらず、人の注意を占拠し、無意識に作用するのです。

 

期限ギリギリで一気に作業が進んだ、という経験がある方もいるかもしれません。

これは欠乏の良い面です。

心を占拠するので、持っている能力を一番効率よく使うことに注意を集中できます。

 

欠乏は集中を引きおこしますが、心を占拠するので、

もっと重要かもしれないことが抜け落ちることがあります。

これは「トンネリング」と呼ばれています。

 

また、欠乏状態になってしまうと、

負荷がかかり続けることになるので処理能力が低下してしまいます。

具体的にどの程度影響があるのか、と言いますと、 ある実験ではIQが13〜14も下がったというのです。

13〜14のIQの低下は、「平均」から「知的障害との境界」とされる段階に移るレベルを意味します。

 

欠乏状態を回避するには、常に余裕を持った行動をしなければなりません。

余裕は時として無駄に見えますが、余裕がないと緊急事態に対応できないのです。

時間が欠乏している時、労働時間を増やすという解決策が講じられることが多いと思いますが、

処理能力が低下していることはほぼ考慮されません。

処理能力の管理が、欠乏の回避には非常に重要だと言えます。

欠乏を避ける個人の具体的な行動指針として、

重要だが緊急でない仕事を優先的に片付けることです。

長い期限はトラブルの元なので、自分で短めの期限を設定し素早く片付ける方が吉です。

 

欠乏という視点に立つと女の子の置き忘れの件も違った視点で見ることができ、

今後このような出来事を起こさないための解決策を考える手がかりにもなり得る、

と考えたので、本文を書いてみました。

 

今回は以上になります。