理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

人はなぜタバコや薬物に手を出してしまうのか~進化生物学的観点から~

タバコ、酒、薬物などなど・・・人生を破壊してしまいかねない悪性化学物質は身近に溢れています。体に悪いとわかっているのに、なぜ手を出してしまうのでしょうか?

 

快楽物質が分泌される、というのが当然一つの理由でしょう。

ですが、進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏は著作の中で興味深い可能性を提案しています。

ゴクラクチョウという鳥は90cmもの長さの尾羽を持つそうです。これは歩くときも飛ぶときも邪魔になります。

このような特徴は、鳥の生存を脅かすので、自然淘汰されそうなものです。

自然界には、あえて自らの身を危険にさらすような身体的特徴を持っていたり、行動をとったりする動物は他にもいます。

ではなぜ、ゴクラクチョウは長い尾羽をもっているのでしょうか?

一説によれば、

「ハンディ・キャップを持っているにも関わらず生き残る強さを示している」

というのです。

ハンデを抱えているのに生き残ること、

これは自分は強いオスだ!というメスへのアピールになります。

すなわち、危険な行動をしても生き残る強さを示しているのではないか、というのです。

そして、人間も同じなのではないか、とジャレド・ダイアモンド氏は考えています。

 

二日酔いやタバコの刺激に対して耐えられる自分は他人より優れている!

とアピールしているというのです。

 

ただし、人間の場合はゴクラクチョウや他の動物と比べて利益よりもコストのほうが圧倒的に大きいのも事実です。

この説だけですべてを説明できない、ということはジャレド・ダイアモンド氏も述べています。

 

しかし、進化生物学的観点から人間の行動を読み解くというのは、非常に興味深いアプローチだと、私は感じました。