理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

【書評・要約】『都市で進化する生物たち:”ダーウィン”が街にやってくる』

進化という言葉を聞くと、大自然の中で何千年何万年という単位でゆっくりと起こる現象だイメージするのではないでしょうか?

しかし、進化は都市で、しかももっと短いスパンで起こっているという驚きの主張しているのが本書、『都市で進化する生物たち:"ダーウィン"が街にやってくる』です。

著者について

本書の著者はメノ・スヒルトハウゼン氏です。

オランダの進化生物学者生態学者で、ナチュラリス生物多様性センター(旧オランダ国立自然史博物館)のリサーチ・サイエンティスト、ライデン大学教授になります。

本書の概要

著者は都市に住む生物を研究しています。その研究成果を一般向けにわかりやすく説明したのが本書です。

大自然、というと、森林や海、アマゾンなどをイメージしがちです。しかし、生物たちにとっては、トンネル、ビルの壁、スモッグさえも自然の一部なのです。

チョウやガ、鳥にネズミ、他にもさまざまな生物が都市という自然に適応するために変化し続けています。生態系の驚くべき実態を本書は解き明かしてくれます。

印象に残った点

私が特に驚いたのは、地下トンネルで蚊が進化した、という話です。

ロンドンの地下鉄の3つの路線から蚊の幼虫のサンプルを採取して育て、成虫になってから遺伝的な分析を行ったところ、3つの地下鉄路線の蚊には遺伝的な差異が存在したそうです。加えて、地上に生息する親類たちとも異なっていました。

さらに驚くべきことに、街路に生息する蚊は人ではなく鳥から吸血するのに対し、地下鉄の蚊は通勤者の血を吸うようになったそうです。また、街路の蚊は冬眠しますが、地下鉄の蚊は年間を通して活動します。性行動にも違いがあるそうです。

このように、都市の至る所で、たくさんの生物がその環境に適応するために進化していることを本書は示しています。

まとめ

本書は生物好きならば間違いなく楽しめるでしょう。名著だと思います。

ぜひご一読あれ。