理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

【書評】『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』〜トロッコ問題は役立たず!?〜

今回は『ハーバードの人生が変わる東洋哲学: 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』の書評です。

本書はタイトル通り、東洋哲学について述べた本です。
中国の思想家を中心にまとめられています。
本書では孔子孟子老子荘子荀子といった思想が紹介されています。

著者は西洋の方なので、「西洋から見た東洋哲学」を知ることができるのが本書の特徴です。

ここからは、本書で説明されている西洋と東洋の思想の違いの部分について、簡単に紹介したいと思います。

目次

 

ロッコ問題は役に立たない!?

西洋では報復と繁栄のために計画を立てるとなると、理性に頼るよう教えられます。
一方で本書の思想家たちは本能を研ぎ澄まし、感情を鍛錬し、絶え間ない自己修養に励むことを考えました。

哲学の話になると、「トロッコ問題」が頭に浮かぶ方もいるのではないでしょうか?
西洋では、この問題について盛んに議論されました。

しかし、東洋の思想家はこのような思考実験はよくできているが、所詮知的ゲームであり、日々の平凡な暮らしをどう生きるかに何の影響も与えないと見切りをつけ、全く役立たずと断じました。

日々をどう生きるか、その点に東洋の思想家は着目していたのです。

「自分らしさ」は必要ない!?

近年「自分らしく生きる」ということが良いことだとされる風潮があります。

ですが、本書の思想家たちは違います。
ありのままの自分を受け入れることに反対しています。
自分らしさを理由に開き直ってしまっては、自分の可能性を自ら限定することになると考えました。

いかに生き、どう世界を秩序づけるか。
中国の思想家たちは日常でこそ大きな変化が起きるのだと説きました

本能や感情を鍛えることで、個々の具体的な状況に対して倫理的に正しい反応ができるようになると考えました。

まとめ

本書では現代の日常の例を挙げながら、孔子孟子老子荘子荀子といった思想家をを紹介しています。
そのため、現代に生きる我々でも古代の思想を落とし込みやすいです。

文章としては平易ではないと思うので、入門書としては不適切かもしれません。
より深く東洋哲学を学びたい人、西洋から見た東洋哲学に興味がある人は読んでみると良いと思います。

興味を持っていただけたのなら幸いです。ぜひご一読あれ!