【書評・要約】『首都直下地震と南海トラフ』〜2030年代南海トラフ地震が起こる〜
残念なことに、パンデミックによって有事に対処する日本の能力の低さが露呈してしまいました。次にくる有事はなんでしょうか?その候補の一つが地震です。ですが、南海トラフ地震が来る、と言われ続けて久しいにもかかわらず未だ来ていません。もはやオオカミ少年のようになってしまっています。
今回のパンデミックから我々が学んだことはファクトに基づいて正しく恐れることの重要性です。現在の地震に関する分析はどこまで進んでいるのでしょうか?その糸口を探るために手にしたのが、鎌田浩毅著『首都直下地震と南海トラフ』です。
鎌田浩毅氏は京都大学教授で火山学・地球科学・科学コミュニケーションを専門としています。本書では、専門家の立場から地震研究の現状が非常にわかりやすく説明されています。専門用語を極力廃した一般向けの一冊です。また、地震に関することだけでなく、富士山の噴火、気候変動、科学に出来ること出来ないことなども扱われています。私は地震のことを集中して知りたかったため、後半は話が逸れてしまって少々内容が薄く感じられてしまいました。
それでは、ここからは本書の内容を簡単に要約します。
目次
南海トラフ地震がいつ来る?どれくらいの規模?
巨大地震に関しては数年内にくる、という予測は可能なようです。しかし、日時の単位で正確に予測することは今の技術では不可能です。
プレートが動く速さはほぼ一定なので、巨大地震は周期的に起きる傾向があります。南海トラフ沿いの巨大地震は90〜150年間おきに起きるという、やや不規則な周期性があるそうです。加えて、地盤の上下変動を解析することで時期の予測が行われます。
また、経験則、統計的分析からの予測も行われています。
南海トラフ沿いの巨大地震が起きる50年ほど前から日本列島の内陸部で地震が頻発するようになる、と判明したそうです。実際、20世紀終わりから内陸部での大きな地震が頻発しています。
このよう科学的予測、経験則などの複数の予測方法から、次の南海トラフ地震は2035年、±5年の誤差を見込んで2030〜2040年に発生する、と予想されています。本書の著者はどんなに遅くても2050年までには発生すると述べています。
そして、次の南海トラフ地震はマグニチュード9規模になると予想されています。
過去の南海トラフ地震では、3回に1回は超巨大地震が起こってきました。次に南海トラフで起こる巨大地震は3回に1回の番に当たってしまいます。津波の規模は最大20メートルになるとの予想もされています。
首都直下地震は起こる?
地震の起こり方には2種類あります。プレート(地球の表面を覆う巨大な岩盤)によって引き起こされる地震と活断層によって引き起こされる地震です。前述の南海トラフ地震はプレートがずれたことによって起きた地震です。首都直下地震が起こるとすれば、それは活断層によって引き起こされる地震です。
活断層によって起こる地震は震源が浅いという特徴があります。そのため、逃げたり隠れたりする余裕もなく突然巨大な揺れに襲われることになり、被害が甚大になると予想されます。
活断層によって起こる地震も周期性があるため大まかな予測することは可能ですが、日時までは予想できません。
東日本大震災は非常に巨大な地震でした。これによって大きなエネルギーが放出されたからしばらくは安心、という甘い話ではないようです。東日本大震災の後に日本列島は5.3メートルも東に移動しました。これによって、日本列島は地震の活動期に入ってしまったそうです。日本には活断層が2000本以上もあります。まだ知られて居ない活断層もたくさんあります。東京だけでなく、いつどこで巨大地震が起こってもおかしくない状態です。
富士山は噴火するの?
火山学的に富士山は100%噴火するそうです。そして、火山の噴火と地震は密接に関わっています。
2004年にインドネシアのスマトラ島沖でマグニチュード9の地震が起きた4ヶ月後に複数の火山が噴火を開始しました。日本でも同様のことが起こる可能性があります。
南海トラフ地震などの巨大地震に連動して、富士山が噴火する可能性は十分に考えられます。実際、東日本大震災によって富士山が噴火してもおかしくなかったのです。
噴火した場合の影響を一概に言うことは困難です。火山灰、噴石、溶岩流、火砕流、泥流、岩なだれなどのパターンが考えられます。そして、こうしたパターンは時々刻々と変化することもあります。
しかし、地震と噴火で違う点は、噴火は1ヶ月ほど前から予知できることです。マグマがゆっくり上昇してくる際に火山性の地震が起こり、地殻変動も観測されます。
噴火予知のシステムはしっかりとできているためそれをちゃんと聞いて行動すれば、人が死ぬことはないようになっているとのことです。
噴火が起こる1ヶ月間が準備期間としてあります。その間に、冷静に準備と対策をすることが大切です。
まとめ
本書を通して、地震について今判明していることと分かっていない事がはっきりしました。南海トラフ地震は2030年代には起こる可能性が非常に高く、正確な日時までは誰にもわからない、ということがわかりました。富士山の噴火は1ヶ月前にはわかる、というのは安心材料でした。
ありきたりな結論になりますが、日頃の備えが大事だということになります。検索してみると、火山灰用のマスクとか、噴火対策グッズも色々とあるんですね。
本書は地震、火山、自然との向き合い方について学べる一般向けの一冊でした。ぜひご一読あれ。