理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

【レビュー・要約】『EXTREME TEAMS』〜最新の組織論〜

ここでは、ロバート・ブルース・ショー著『EXTREME TEAMS』を要約します。

本書では、チーム制の持つポテンシャルを理解し、新たなアプローチを実験していこうという意欲があるチームを「エクストリーム・チーム」と呼んでいます。

エクストリーム・チームの共通点として挙げられているのは以下の6つです。

 1.成果と人間関係の両立

~職場における社員のエンゲージメント・レベルは「職場に親友がいるか」という質問の答えとはっきり連動する~

成果を達成し、同時に適切な人間関係が成り立つ人間関係も構築することで、成果と人間関係はシナジー効果を生み出します。

しかし、成果と人間関係は対立しやすのもまた事実です。どちらかを極端に追求することで、他方が損なわれます。普通のチームは許容可能な均衡を求めて、どっちつかずの罠に陥ってしまいます。

エクストリーム・チームは両方をギリギリの先端まで求めることで、チームに突き抜けた成功をもたらします。 

 

2.執着心を共有する

~エクストリームなこだわりが、エクストリームな成果に。「何を」でなく「なぜ」売るか~

先鋭的企業は、社員やチームの大多数が同じ執着心を抱いています。
執着心を持って働く人は仕事を使命としてみています。執着心は「やり抜く力(GRIT)」につながります。

執着心があることで、間違った対象を追いかける、頑固になってしまうなどの問題点はあります。

しかし、「社員がただ仕事をこなすだけ」という方が問題です。振り切って大きな成果を生み出すのが、エクストリーム・チームです。

 

3.採用は能力よりも適正

~技術は後からでも教えられるが、情熱は教えられない~

先鋭的企業はスキルと同じくらいに企業文化に適するかをどうかを重視します。企業文化への適性は

「会社の価値観を支持しているか」

「成果を出すことを重視しているか」

「人間関係を大事に考えているか」

において重要です。

エクストリーム・チームは採用や昇進の評価において、これら3つの性質を審査する具体的なプロセスを整えています。

まずは、「会社としてチームとして自分たちは何を体現するのか」を明らかにすることが必要です。

 

4.ビジネスの焦点を絞ると同時に広げる

~難しいのは「何をしないべきか」を知ることだ~

先鋭的企業は自社の置かれたコンテクスト(流れや背景)を社内で広く積極的に周知します。その上で、必須かつ少数の戦略的優先事項を明確にします(3つか4つ)。優先事項を理解できるように、パフォーマンスを測る指標および説明責任の所在とともに具体的に提示します。

一方で、焦点を絞りすぎると墓穴を掘るため、顧客や収益獲得の新たな機会を積極的に試すよう奨励しています。先鋭的企業は新しいアプローチをあれこれ手を出し、小さい範囲で実験して、有望と見られるアイデアだけを次のレベルに進めていきます。

 

5.ハードかつソフトな企業文化の追求

~企業文化のベースには感情がある~

先鋭的企業は自社がどんな特性を持つ企業でありたいか、社員がどんな感情を抱いて働く企業でありたいか、を明確にします。

 そのうえで、エクストリーム・チームは以下の6つの文化特性を持っています。

「オールイン」=会社を100%信じ、献身的に取り組む

「自由裁量権」=自立・自律意識がある

「情報の透明性」=社内で情報をオープンかつ誠実に共有している

「説明責任」=パフォーマンスに対して、完全に責任を追う

「楽しむ」=仕事そのものを楽しんでいる。仲間との交流も満喫

「共同関係」=連帯感と助け合いの精神がある

 

6.気まずさを恐れない

~一般的な企業とチームは「末期的な『良い人』病」にかかっている~

 エクストリーム・チームは目標を達成するためには衝突や緊張関係が必要だと信じています。そのために、気まずさを恐れない環境、衝突を歓迎し生産的なものであるという空気を作ります。

そして、大胆無謀な目標を設定し、追求していこう、という主体的責任感をメンバーにもたせます。

生産的に衝突するために、少数・必須の低レベルの問題を回避し、最も違いを生み出す領域を絞り込むことが必要です。

 

まとめ

それぞれがユニークな才能や体験を持ち寄り、チームとして力を合わせ、個人ではできないものを生み出すことこそが、チーム形成の目的です。

エクストリーム・チームは、ビジネスと人間関係の両方を極限まで追求していく。エクストリーム・チームは諸刃の剣です。成果と人間関係の形成に徹底的な努力をしていかなければなりません。

終身雇用がメインの日本企業には合わない部分も多いかもしれません。しかし、終身雇用が限界を迎えつつある今、日本企業がどのような変革を遂げていく必要があります。企業の今後を考える上で、参考になる部分も多いと思います

ぜひご一読あれ。