理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

【書評・要約】青砥瑞人著『BRAIN DRIVEN』②〜ストレスを味方につける〜

今回は青砥瑞人氏の著書『BRAIN DRIVEN』のレビュー・要約を行います。
本書を取り上げるのは2回目になります。前回の記事もぜひご覧ください。 

本書はモチベーション・ストレス・クリエイティビティの3つを脳科学的に解説してます。前回はモチベーションについてまとめました。この記事では、ストレスについて説明します。
目次

ストレスを理解する

ストレスを感じる、というのは、実は3つの段階に分解して考えることができます。

1段階目は、外部や内部から刺激がもたらされる段階です。外部由来の刺激の例としては、上司からの説教が挙げられます。そして、説教の記憶の思い出すこともストレスの原因です。この思い出す行為は内部由来の刺激となります。これら外部・内部からの刺激はストレッサーと呼ばれています。

2段階目は身体内や脳内の変化です。ストレッサーが私たちの体に作用すると、身体や脳に様々な神経伝達物質が駆け巡ります。

3段階目は身体内や脳内の変化を認識することです。身体や脳がストレッサーによって反応している状態と、反応している状態を認識することは異なる、ということです。

この流れはモチベーションとも共通しています。

ストレスの役割

ストレスには3つの役割と意味があります。
1つ目は、受け取った情報がどのような種類のものであるかを伝える役割です。危険と出会った時にストレス反応が起きおることで危険から逃げることができます。そのため、生存確率を上げるために、ストレスは重要なのです。

2つ目は、記憶力を高める役割です。入ってきた情報に対してストレス反応することは、脳に記憶化させる役割があります。ストレス反応を記憶することで、次に似た情報が来たときにより反応速度を高めることができます。

3つ目は、「直感力」への影響です。「何かがおかしい」と感じるのは脳が知らせてくれている違和感です。その感覚が直感となって瞬時に判断を下すことが可能になるのです。

このようなストレスの機構は大昔、外を歩けば猛獣に襲われるような危険な環境で習得されたものです。現代の安全な環境では役に立つ場面はほとんどなく、ストレス=敵という印象を持つ方が非常に多いと思います。しかし、ストレスとうまく付き合うことができれば、私たちは日常をより豊かにできる可能性があります。

ストレスに気が付く

繰り返しになりますが、ストレスは認識されて初めてストレスとなります。「ストレスがない」と言い続けている人の方が、鬱病になりやすい傾向があるそうです。ストレスに気づいていない状態では、ストレスに対してどのように行動すれば良いかわからないからです。ストレスに気がつけば、リフレッシュしたり誰かに相談したりできます。

つまり、自分の内面に目を向けることが重要ということです。マインドフルネスが注目されているのも、これが一つの理由でしょう。自分の内面の変化に気づくメタ認知能力を向上させるには、瞑想が有効です。

適切なストレスは注意力や集中力を高める

自分がやりたいことややろうとしていることが前提ですが、やらなければならないタスクから受けているストレス反応は、注意力や記憶定着効率が高まりやすくなります

ストレス反応によって、コルチゾールノルアドレナリンドーパミンといった神経伝達物質が放出されます。これらが脳にある前頭前皮質という部位に作用すると、集中力や注意力が高まります。
納期が迫っている、といった状況で作業に集中できた、という経験を持つ人も多いのではないでしょうか。これはストレス反応のなせる技です。このような成功の記憶があれば、徐々に「ストレスを感じているが悪い状態ではない」と考えることができるようになっていきます。

しかし、過剰なストレスや必要のないストレス、慢性的なストレスは避けるに越したことはありません。ストレスが過剰になると、前頭前皮質の機能が停止してしまい、「とにかく逃げろ」「戦え」というモードに切り替わります。また、極度の緊張などによってストレス反応が高まると、考えたいのに考えられなくなる、という状態人立ってしまいます。また、慢性的なストレスによって、コルチゾールが分泌され続けると、記憶を司る海馬が萎縮してしまう、ということが明らかになっています。

ストレスのパターンを学習する

ストレスを認識した後は、過去のエピソードやその時の感情を思い返して、パターン化することで、ストレス反応を学びに変えることができます。

皆さんも成功体験の裏に、ストレスに打ち克った経験を持つ方も多いのではないでしょうか。成功体験の価値を増加させるために、成功前にどのようなストレスがあったか、を分析することが非常に重要です。
成功によってポジティブな感情が出ている時に失敗やストレスと結びつけて同時に学習することで、レジリエンスを高めることができます。成功と同時にネガティブな経験を想起することで初めて、「辛い経験の先に大きな喜びがある」と学ぶことができるのです。それによって失敗やストレスを価値あるものとして脳が認識してくれます。

まとめ

まずは、ストレスは敵、という先入観を捨てることが大切です。ストレスをうまく利用できれば、仕事の効率化やより大きな成功につなげることができる可能性があります。ストレスを味方につけて、集中力やレジリエンスを高めて生きたいものです。

本書は脳の仕組みについて学べる一冊になります。今回はストレスについてまとめました。

ぜひご一読あれ。

瞑想やストレスが脳に与える悪影響についてもまとめた記事がありますので、ぜひご覧ください。