【書評・要約】『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき』
『シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき』を紹介、要約します。
「シンギュラリティ」という言葉、耳にする機会が増えています。
そのきっかけとなったのが、著者レイ・カーツワイルが本書で提言したことです。
元々、「シンギュラリティ」には「特異点」、という意味があり、数学で使われる用語でした。次にこの用語を用いたのは天文物理学の分野で、ブラックホールの説明のために用いられました。
人類の歴史における知能の爆発、という意味で初めて「シンギュラリティ」を使ったのはジョン・フォン・ノイマンです。ノイマンはコンピュータの発明者として、広く知られています。
本書で終始強調されていることは、「収穫加速の法則」です。
これは著者カーツワイル自身が命名したものです。
テクノロジーは線形的に発展するのではなく、指数関数的な速度で拡大する、ということです。
しばしば未来予測が外れるのは、線形的な予測をしているためである、と述べられています。
未来を予測するためには、指数関数的な成長を考えていかなければならないのです。
シンギュラリティは機械が人間の仕事を奪う、とか、機械が人間を滅ぼす、といった次元の話ではありません。
「人間と機械の融合」こそシンギュラリティなのです。
すでに脳とコンピュータを直接連結する研究は行われています。
人間の知能の長所は以下のようなものが挙げられます。
- 捉え難いが一定した特性を持つパターンを認識する能力
- 経験をもとに洞察を働かせ、原理を理解することで新しい知識を学習する能力
- 頭の中で現実をモデル化して、そのモデルの様々な側面を変化させることで頭の中で実験を行う能力
欠点は非常に遅いということ、容量が限られていることなどが挙げられています。
一方で、非生物学的な知能は
- 正確に何度も繰り返し実行する能力
- 容量
- 速さ
- 共有する力
が長所となります。
人間の長所と機械の長所を合体させて脳の機能を高めることで、パラダイムシフトが起こる率が急速に高まります。
まずは、脳の中にナノサイズのロボット(ナノボット)を組み込むことから始まります。ナノボットを用いて、脳の機能解析を進めます。
さらには、生体のニューロンと相互作用して、神経系の内部からVRを作り出し、人間の体験を大幅に広げます。
ナノボットは脳と直接やり取りすることで、非生物学的知能と脳を接続、人間の知能を大幅に向上させます。
ナノボットで解析した人間の脳をリバースエンジニアリングすることによって、人間の知能の並列的で自己組織的なカオス的アルゴリズムを、莫大な能力をもつコンピューティング基板に適用できるようになるでしょう。
こうなると意識を「コピー」してバックアップをとることも可能になります。
この知能は自分自身の設計をハードウェアもソフトウェアも含めて改良する立場になり、それが急速に加速しながら繰り返されるでしょう。
細かい議論は飛ばしますが、2040年代の中盤には、1000ドルで買えるコンピューティングは10の26乗cpsに到達し、約10の12乗ドルのコストで一年間に創出される知能は、今日の人間のすべての知能よりも約一〇億倍も強力になると予測しています。こうした点から、カーツワイルは人間の能力が根底から覆り変容するシンギュラリティは、2045年に到来する、と考えているのです。
知能の強化に伴って、人体の強化も起きます。すなわち、人体を機械に置き換えるサイボーグ化です。
そうなったとき、人間とは、自分とは何なのでしょうか?
本書の終盤では哲学的な議論もなされています。
2045年にはどんな未来が来るのか。
本書の予測が当たるのか、外れるのか。
本書とともに2045年まで過ごすと非常に面白そうです。