理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

【書評・要約】『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』

今回は『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』の要約をします。本書では、腸に関する科学的知見をまとめた本です。 

最新の知見が多いですが、人での研究は個人差などの観点で難しいことが多く、腸科学は発展途上、といった印象を受けました。

腸内環境が及ぼす影響

近年の研究で人体の内側や外側にいるあらゆる微生物の集合体を指すヒト・マイクロバイオームが肥満、糖尿病、アレルギー、自己免疫疾患、ひいては性格にまで影響を及ぼすことが明らかになってきました。

たとえば、内向的なマウスに外交的なマウスの腸内細菌を移植すると、内向的なマウスの外向性が向上する(その逆も然り)ということが報告されています。

また、アレルギーに代表される免疫系に関わる病気が近年増加しています。腸内細菌は免疫系と密接に関わっており、腸内環境の悪化が免疫系に悪影響を及ぼしていると考えられています。

 

腸内環境を整えるために

このように、腸内環境は病気や性格など多くのところに影響を及ぼすのです。
健康な腸内環境とは、腸内細菌の多様性がある状態です。
腸内環境を整えるために、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。
本書では、以下のような対策が提案されています。

  • MACの多いものを食べる

マクドナルドではありません。
Microbiota accessible carbohydrates、略してMACです。
腸内細菌の餌になるMACを多く含む食品は玄米や全粒大麦、豆類、野菜、果物に多く含まれています。

  • 発酵食品を食べる

発酵食品は有用菌のカクテルです。
ヨーグルトや発酵サワークリームケフィア、ピクルス、コンブチャ、納豆、キムチなどが挙げられます。
これらは、腸内細菌の多様性を維持するのに重要な役割を果たします。

  • 土やペットと触れ合う

土壌には多様な細菌がいます。こうした細菌との触れ合いもマイクロバイオータ の多様性維持には重要です。筆者の家では、子供が庭で遊んでいたり、犬と戯れていたり、庭仕事をしたりしていた時には、食事の前に子供たちの手を表せないことも多いそうです。しかし、ショッピングセンターや病院、動物と触れられる動物園、他の人や家畜が病原菌を持っているかもしれない場所から家に帰ってきたときは、手を洗わせるそうです。

抗生物質は悪玉菌だけでなく、善玉菌まで見境なく殺してしまいます。そのため、飲まないに越したことはありません。もしも飲む場合はヨーグルトや発酵食品、有用菌のサプリメントを飲むことが推奨されています。

 

まとめ

本書は腸に関する最新の知見をまとめた一冊になります。
研究が発展途上で、かつ、腸内環境は人によって大きく異なるため、万人に必ず有効な健康法といった類のものは出てきません。
自分自身の腸内環境を知ることもなかなか難しいですしね。
今後の研究の発展が楽しみな分野です!