理系研究者の書評ブログ

30代の化学系の研究者が、読んだ本の書評を書いています。

【レビュー・要約】『岸田ビジョン 分断から調和へ』〜岸田氏の政策まとめ〜

 

 

岸田ビジョン 分断から協調へ

岸田ビジョン 分断から協調へ

 

本書は2020年9月11日に発売された岸田氏の政策提言の書であり、政治家としての実績、人生について記された一冊です。


ここでは特に、政策面についてまとめてみたいと思います。

 

政策のキーワードは、タイトル通り「分断から協調へ」、岸田氏の国内・外交政策の基本となる姿勢です。

 

 

格差の是正

富裕層の負担を増やし税率を上げる施策を提案してます。

『高齢者であったも、多額の所得があるいわゆる富裕層には、応分を負担してもらう必要がある』

『株の売買、配当、債券、預金の利子などによる収益=キャピタルゲインにかかる税率は現在、二〇・三一五パーセントですが、この税率の適用範囲見直しについても検討が必要かもしれません』

『所得階層と課税率をみると、一億円を境にして、所得に対する実効税率が下がるという現象が見られます。所得の多い人の方が金融資産から得る収入が多いため、結果として所得全体に対する税率が低くなっているのです。』

『短期売買のキャピタルゲインの税率を二〇パーセントから引き上げることにより、そこで得られた税収を、中間層の負担減に充てることで、社会の公平感を取り戻すことなども検討に値します。』

 

中間層を支える政策、富の再分配を進めたい、という考えです。


経済政策

コロナウイルスが、今後大きな経済危機をもたらした時、どんな手を打つことができるのか。岸田氏の提言はこうです。

アベノミクスの二本の矢、「大胆な金融緩和」と「機動的な財政政策」で時間を稼いでいる間に、しっかり経済の生産性を上げて、足腰を強固にしていくほかありません。そのためにも、アベノミクスの三本目の矢である「成長戦略」をさらに推し進めていくことが重要です。』

成長戦略として具体的な方策として、4つのキーワードをもとに述べられていました。簡単にまとめます。


✓中間層中小企業
・教育と住宅支援も拡充
・ベースアップを実施した企業への税制面での優遇
リカレント教育
・中小企業、小規模事業者の利益や付加価値、労働や資本の分配状況を業界や会社の規模ごとに「見える化

✓データ・デジタル化
・超高齢化社会における医療・介護データなどのリアル・タイムデータの活用
WiFiや5Gの普及、光ファイバー網の整備
・「データ庁」などの専門機関の設置

✓地方・地域
・「デジタル田園都市構想」
・高速大容量のインターネットをユニバーサルサービスに指定
スマホ保有率を100%に近づける
防災無線の配備より、全国民にスマホ
・スマート農業

イノベーション・研究開発
・財政運営や資産運用などにおける、大学経営の自由度を増す改革
・若手研究者のポスト拡充


外交

岸田氏はソフトパワー外交』を目指しています。
力に頼らず、地政学的な特性を生かして、アジア、ヨーロッパ、中東、アメリカなど各国・各地域を繋ぐ「橋」になることを狙っています。
信頼関係をベースにした外交です。

『日本は今後、世界の「仲介役」「架け橋」となることで再活性化し、同時に、国際社会で存在感や発言力を確保していくべきです。』

北極や宇宙、サイバー空間など、まだ国際ルールが未形成、不十分な分野での議論を主導しルールメーカーとしての役割を果たしたいと考えているようです。

また、日米同盟を基軸にしながらもアメリカにもある程度、率直に物を言うことも大切と述べています。

韓国との「慰安婦問題」に関しては、韓国の姿勢を批判しています。
「最終的かつ不可逆な解決」の合意に関して、

『国と国の国際的国際的約束ほど重いものはなく、韓国が取る態度には、率直に言って腹が立ちます。』

と述べていますが、北朝鮮の核の脅威や有事の際の対応のため、韓国の協力抜きに日本単独での行動はあり得ないと考えているため原理原則は決して曲げずに、日本の最終的な国益のために「折り合ってい」きたいようです。

憲法

『国民の判断を仰ぐときが来ているのではないでしょうか。』

と述べており、
自衛隊の明記」「選挙における一票の平等」「教育の充実」「緊急事態対応の規定」
を目指しています。

核兵器問題

岸田氏は広島の出身であり、「核軍縮」がライフワークです。

『「核なき世界」の実現のために政治人生を捧げたいと考えています』

 

 

所感

岸田氏の政治観だけでなく、人柄、人生まで知ることができる一冊です。

驚くような施策、というのはなかったような・・・?

文章は読みやすいので、この総裁選を機に読んでみてはいかがでしょうか?